対談企画~おかやまコープ

新春対談~支援する側・される側ではない「支え合う心」をこれからも

※この対談は、アムダマインズ季刊誌「ニュースレター」の2025年新春号に掲載されたものです。

  • 2025年最初のニュースレターとなる今号では、「国際協同組合年」にちなみ、私、鈴木俊介(アムダマインズ理事長)が、生活協同組合おかやまコープの田中照周(てるちか)理事長にお話を伺った際の様子をお届けします。
     
    昨年、再建50周年を迎えられた生活協同組合おかやまコープは、2010年にザンビア支援を端緒に、15年にわたってアムダマインズの活動を応援してくださっています。その支援の輪は2013年にはホンジュラス、2021年にはネパールへと広がり、アフリカ、中南米、アジアの多くの母子のいのちと生活を支える大きな力となっています。
     
    ご支援の柱は、組合員や店舗のお客様からの募金をもとにした「AMDA基金」による支援と、組合員による絵手紙交換や手作りプレゼントなどの交流活動の二つです。
  • おかやまコープ田中理事長(左)とアムダマインズ理事長の鈴木(写真提供:おかやまコープ)

  • 「AMDA基金」贈呈式の様子(写真提供:おかやまコープ)
  • 鈴木:まずはこれまでの長年にわたるご協力、本当にありがとうございます。コロナ禍以降、日本国内の経済状況が停滞する中、「海外に支援している場合じゃない」といった声も少なくありませんが、おかやまコープや組合員の国際協力に対する意識に変化などはありましたでしょうか?
     
    田中:毎年10月は「AMDA募金月間」と称し、AMDAグループの活動を支えるための募金を受け付けていますが、2024年の募金額は前年を上回りました。能登への支援も2回目の募金を呼び掛け、すでに1千万円を超える額が集まっています。確かに、物価の高騰で生活の余力が奪われつつあるのはおっしゃる通りですが、募金額の増加から見ても、組合員が持つ「応援したい」「力になりたい」という気持ちは、社会情勢に左右されず存在しているように感じます。自分の日々の暮らしが厳しくなりつつある中でも、国内外を問わず困っている人を応援したい、多くの方がその想いを大切にしてくださっている、そう感じています。
  • 鈴木:大変ありがたいことです。ただ私も以前、流通業界におりましたが、おかやまコープの組合員や消費者の皆さまは、地産地消や食の安全性などに元々関心の高い方が比較的多いように思います。だからこそ、国際協力や募金活動への理解も得やすいのではないかと考えることがありますが、いかがでしょうか?
     
    田中:それは卵と鶏の話のように、どちらが先なんだろう、そういう関係ではないかと思います。おかやまコープには、国際協力や環境問題などに関心を持つ組合員がいて、その方々が他の組合員にも働きかけた結果、広がってきたのだと思います。一方で、もともと国際協力や環境への関心が薄かった方でも、コープの商品やサービスを利用する中で意識が変わっていったという面もあるのではないでしょうか。「コープのエシカル」という冊子では、エシカル消費につながる商品を紹介していますが、人から人への広がりに加え、こうした商品を介して、関心の輪が大きくなっていったのだと思います。
  • おかやまコープ オルガ本部での対談(写真提供:おかやまコープ)
  • 冊子「コープのエシカル」(左)とAMDA募金を呼び掛けるチラシ
  • 鈴木:冊子を拝見して、環境や社会に配慮した商品開発や、日本の農畜水産業を応援する商品など、さまざまな取り組みをなされていることに驚きました。さらに、ミャンマーやアンゴラの小学校支援など、国際協力につながる寄付付き商品もあるのですね。
     
    田中:そうです。こちらは日本生活協同組合連合会が開発した商品で、国際協力に貢献することにもつながります。それに加えおかやまコープでは、AMDAやアムダマインズを通じた国際協力、海外で活躍する岡山県出身のパラノルディックスキー日本チームの新田佳浩選手も応援してきました。
     
    鈴木:先ほど、多くの組合員が「国内外を問わず困っている人を応援したい」という気持ちを持ってくださっていると伺いましたが、国際協力への機運作りといいますか、応援の輪をもっと広げるために私たちアムダマインズはお力になれていますでしょうか?
  • 田中:冒頭に募金の話題がでましたが、毎年10月の「AMDA募金月間」で寄せられた募金がどう使われ、どんな結果を生んだのか、自分たちが作った手作りプレゼントが誰に届けられ、どう喜ばれたのかを毎年、アムダマインズからご報告いただけることが、組合員にとても喜ばれています。映像や写真で見せていただくと、「自分たちの気持ちが現地に届いている」と実感でき、応援の輪をさらに広げる原動力になっていると感じます。
     
    ザンビアに日本から絵を届けると、ザンビアの子どもたちからも絵が返ってくる。ホンジュラスの山間部で、馬に乗って川を渡る妊婦の写真を見て「同じ母親となる女性が、こんな厳しい環境で暮らしている。応援したい」と感じる。日本の子どもたちが手にするおもちゃが、ネパールの山奥の村にはないと聞いて、「じゃあ手作りのおもちゃを贈ろう」と思い立つ。こうした、組合員が知り、考え、行動に移したことが現地で喜ばれ、その様子が写真や映像で返ってくる…。
  • ネパールの子どもに贈るおもちゃを手作りする組合員(写真提供:おかやまコープ)
  • 組合員手作りのガラガラを手にニッコリ(ネパール)
  • 田中:これが「支援する側」と「支援される側」の関係を超えた、「親しみ」や 「自分も頑張ろう」という気持ちを生み出しているのです。私もそうですが、この気持ちは多くの組合員の心に芽生えていて、その輪がさらに他の組合員にも広がっていく。そうした積み重ねが応援の輪を作り上げてきたのだと実感しています。
     
    鈴木:アムダマインズのスタッフが、募金の贈呈式や組合員の学習会で直接、組合員の方々に現地の様子をお伝えする機会をいただけていることに感謝しています。
     
    田中:私たちは生活協同組合ですから、組合員の代表である総代に年間計画や翌年度の活動方針について報告をしたり、翌年度の活動の進め方にご意見をいただいたりする場を年4回設けています。その中で、「AMDA基金」の募金活動を担当したり、手作りプレゼントを用意したりした総代が、自分の気持ちや活動の感想を発表する場もあります。この発表が共感の輪をさらに広げるきっかけにもなっています。
     
    鈴木:そのように思いを共有する場があることで、活動の意義や大切さがさらに伝わるのですね。
  • 田中:まさにそうです。私たちは組合員の組織なので、誰かが何かをトップダウンで決めていくのではなく、みんなで話し合いながら進めることを大切にしています。まさに100人の一歩一歩が集まって大きな前進につながる、そんな姿勢を心がけています。
     
    鈴木:組合員の皆さまの思いや行動の積み重ねに、深く感じ入りました。もっとお話を伺いたいところですが、また次の機会を楽しみにしています。いまご支援くださっているネパールにも、機会がありましたらぜひ足をお運びください。
     
    田中:アジアではこれまで中国しか訪れたことがありませんでしたが、ぜひ、ネパールにも伺ってみたいですね。
     
    鈴木:お待ちしております。それでは最後に、アムダマインズへの期待をお聞かせください。
  • 新生児と産婦に必要なアイテムのセット「赤ちゃんキット」の配布(ネパール)

田中:先ほどお話しましたが、組合員は「支援する側・される側」という意識からではなく、「同じ母親」として応援しています。支援ではなく「支え合う」。アムダマインズにはこれまでと同様、これからもその気持ちを大切にしていただけるとありがたいです。
 
鈴木:組合員のお気持ち、私たちも大切にしていきたいと思います。今後ともよろしくお願いします。(対談了)
 
 

生活協同組合おかやまコープ
岡山県を区域に、宅配、店舗、共済、福祉事業などを展開する生活協同組合。現在の店舗数は11、組合員数は34万世帯で岡山県内の4割を超える。2024年7月に再建50周年を迎えた。公式ウェブサイトはこちらから。

 
 

2025年国際協働組合年
2023年11月の国連総会決議「社会開発における協同組合」にて決定された国際デー。2012年に続き2回目。国連は同年を通じ、SDGsの実現に向けた協働組合の実践、社会や経済発展への協同組合の貢献に対する認知向上に取り組むよう、各国政府や関係機関に要請している。