わたしのこころいきインタビュー

わたしのこころいき~岡山発「おもしろそう!」が原動力の国際貢献
合同会社ダフェプロジェクト 江見優子さん

 
おかやま国際貢献月間協賛事業「おかやまのこころいき」特別インタビューをお届けします。
 
ネパール事業担当の小林麻衣子がお話を伺ったのは、合同会社ダフェプロジェクト(公式サイトに移動します)の江見優子さん。岡山とネパールをつなぐ活動をされています。
 

合同会社ダフェプロジェクトの江見優子さん(左)とアムダマインズの小林(右)。気持ちのよい秋空の下、「おかやまのこころいき」ロゴをもって撮影。

 
小林:江見さんとは長いお付き合いなのに、こうしてゆっくりお話しを聞くのは実は初めてで、ちょっと不思議な気分です。いまさら?!な質問があるかもしれませんが、お許しを。まず最初にお聞きしておきたいのですが、そもそもどうして「ネパール」だったんでしょうか?
 
江見:私の祖父が、海外からのホームステイを受け入れていたので、物心ついたときから我が家には、フィリピンなどアジアの国々の人が出入りしていました。その上、父親が世界青年の船に参加していたこともあって、海外、特にアジアというものが幼少期から身近でした。私は機会がありアメリカに3年住んでいたことがあるのですが、その時の「マイノリティ」としての経験が、多様性のある環境に身を置いていたい、困っている人を手助けしたいという気持ちの土台になった気がします。たまたまネパールとのつながりができ、たまたま岡山とネパールをつなぐ活動をするようになりました。本当に、たまたまネパールだったんです(笑)。
 
小林:元々は個人的だったネパールとのつながりが、岡山とネパールをつなぐ活動へと変化したのは、どんなきっかけで?
 
江見:2009年に当時の勤務先の上司に「アジアの歌を歌える日本人を知らないか」と尋ねられました。当時私の周りにネパール人が増えていたこともあり、ネパールってどんな国なんだろうとネットで検索をし、ネパール在住歴17年の日本人歌手スンダリ・ミカさんと知り合ったのが活動を始めるきっかけになりました。スンダリ・ミカさんを岡山にお呼びして様々なイベントを開催しているうちに、活動をNPO法人化する話もあったのですが、諸事情あって結果的にはNPO法人ではなく合同会社を設立することになりました。2014年のことです。それ以来、岡山とネパールをつなぐ活動に取り組むようになりました。
ESD岡山アワード2017受賞式にて、スンダリ・ミカさん(右)と江見さん(写真提供:江見優子さん)

小林:江見さんの行動力、色々な人を巻き込む力、人を信じる力、楽しむ力はすごいですね。
 
江見:そんなことはないですよ。結構みんなに驚かれるんですが、実は人見知りをします。誰とでも仲良くなれるようにみえてますが、知らず知らずにこの人とは仲良くなれそうだな、この人は苦手だなっていう線引きをしていますね。楽しむ力については、確かに強いかもしれません。私のモットーは「おもしろそう!」なんです。人がやらないことでもおもしろそうと思ったら大抵行動に移していますね。人を巻き込む力についてはどうでしょう?ネパール人は人懐っこいので、いつの間にか私の方が「巻き込まれている」という表現の方が正しいかもしれません。
 
小林:合同会社ダフェプロジェクトが販売しているネパールコーヒー(公式オンラインショップに移動します)から、収益の一部をアムダマインズのネパールプロジェクトにご寄付いただいています。本当にありがとうございます。このコーヒー豆は、直接ネパールから取り寄せていらっしゃいますが、焙煎をされているSunny Day Coffee(公式サイトに移動します)さんとのつながりはいつからなんですか?
 
江見:2018年にスンダリ・ミカさんと岡山市立建部中学校に出前講座へ行ったのがきっかけでした。建部中学校では、岡山県立福渡高校(現在は閉校)がかつて取り組んでいた「空き缶を回収してネパールに学校をつくろう」という活動を引き継ぎ、継続しています。出前講座に行った時にネパールのこと、ダフェプロジェクトの取り組み、例えばネパールの図書館支援や、ネパールコーヒーを岡山で販売していることなどを生徒さんにお話したんですが、その際、担当してくださった先生が「建部町にも有名なコーヒー屋さんがありますよ。ぜひ行ってみてください。」と勧められて出向いたのがSunny Day Coffeeさんでした。オーナーの江田さんはとても素敵な方で、ダフェプロジェクトの活動にもすぐに賛同して下さり、ネパールコーヒーの焙煎をお願いすることになりました。
 
小林:岡山とネパールをつなぐ活動をされてもう10年以上になられるわけですが、江見さんから見て、この間、岡山に住むネパール人を取り巻く環境に変化があったと思いますか?
 
江見:そうですね。10年前に比べるとネパール人の数自体が増えましたね。ベトナム人の総数には及びませんが、なにしろ伸び率がすごいです。岡山に住むネパール人は留学やコックなどの資格で滞在している人が多く技能実習生として来ている人は実はあまり多くありません。かつては出稼ぎする本人、つまり夫(父親)1人で岡山に来て、稼いだお金をネパールに仕送りするケースが大多数だったんですが、最近は妻や子どもを呼び寄せ、家族で生活するケースが増えてきました。それに伴って、ネパール人を取り巻く環境や直面する問題は、より複雑になってきている気がします。日本で生まれる子どもも増え、教育問題に加え、子どもたちの将来設計も本人の希望や親の思惑などが絡み、ケースバイケースが多く、アドバイスする側も手探りな状態です。まずは日本の教育システムなどの情報を正確に伝えるのが今後の課題だと思われます。
 
小林:江見さんから見たネパールの人ってどんな印象でしょう?
 
江見:ネパール人にもいい人、悪い人、嘘を言う人、頼りになる人、色々います。でもそれは国籍に関係ないですよね。日本にもいい人、悪い人いろいろいますし。ネパールは、後発開発途上国、つまり途上国の中でも特に貧しい国と言われておりネパールの人=助けられるべき人という印象があるかもしれませんが、実はそうではない場合もあります。例えば、岡山でインド料理店「インドダイニングカフェマター」(公式サイトに移動します)を経営されているアチャリヤ・プレム・プラサドさんは、「誰かの力になりたい」という想いが強い人で、西日本豪雨の際には被災地へ赴き、炊き出しをしていました。単純に日本人が支援する側、ネパール人が支援される側というのは間違いで、ネパールの人も「誰かの力になりたい」という気持ちを持っています。

アムダマインズ本部事務所にはよくお立ち寄りいただきますが、こうしてじっくりお話を伺うのは初めて。貴重なお時間をありがとうございました。

小林:最後にダフェプロジェクトとしての今後の展望についてお聞かせください。
 
江見:実は今、「多文化共生のまち岡山」をアピールできるようなレトルトカレーが作れたらいいなと思っていて、地域密着型クラウドファンディング「晴れフレ岡山」に申請中です。またこれまで、定期的にネパールを訪問していたんですが、コロナ禍の影響でこの1年半、現地に行けていません。早い段階で行けるといいな…と期待しています。これからも岡山県内の人・企業・団体・NGO/NPOなど、様々な業種の方々とのつながりを大切に、「おもしろそう!」を発見しながら、岡山発の国際貢献に取り組んでいきたいと思います。