シエラレオネのレオン紙幣 シエラレオネ事務所 松本千穂
シエラレオネではコインがほとんど流通していません。2017年9月現在、10、50、100、500レオン硬貨が存在しているはずなのですが、100レオン以下の硬貨に巡り合うことはほとんどありません。写真1の下中央左に写っているのは、私がシエラレオネに赴任してからの約1年半で手にした唯一の50レオン硬貨です。例外は500レオン硬貨です。昨年11月にガソリン代が一気に1.6倍以上になったため、それまで1,000レオンだったバスや乗り合いタクシーの運賃が1,500レオンに値上げされ、500レオン硬貨の需要が激増したため、ようやく出回り始めたところです。そのため、日々の支払いはほぼ紙幣で行われるのですが、このお札が汚いために直ぐカビ臭くなります。なぜ汚いのか?
シエラレオネ銀行がお札の寿命を延ばすための啓発活動用に作成したポスターをご覧ください(写真2)。その左側に代表的な「良くない紙幣の取り扱い」が列挙されています。 つまり、このような取り扱いが日常茶飯事ですので、最初は綺麗なお札もすぐにボロボロに。偽造防止用のホログラムなど擦り切れて見る影もありません。 銀行も現金の預け入れや引き出しに紙幣計数機を頼ることはできません。湿ってくっ付いていたり、擦り切れて薄くなったり、破れたりしている紙幣も多いので、計数機のカウントミスや故障が多く、初めは機械で数えても必ず最後は銀行員が手で数え直します。そのため、銀行窓口はいつも長蛇の列。私が4千万レオン(1万レオン札4,000枚、約58万円)の事業資金を銀行口座に預けに行った時は、順番が回ってくるまで2時間、数え終わるまでさらに2時間待つ羽目になりました。 しかも、2011~2013年頃は1米ドル=4,300レオンで安定していたレオンの価値が2014年頃から下がり続けています。2016年3月に私が初めてシエラレオネに渡航したとき、交換レートは既に1米ドル=6,000レオンでした。2017年9月11日現在、1米ドル=7,600レオン。今、100米ドル札5枚(約55,000円)を両替すると、シエラの最高額紙幣である1万レオンのお札380枚になって返ってくるのです(写真3)。窓口で「今日は5,000レオン札しかない」と言われたら枚数は2倍…。 1万レオン札はまだ綺麗なものが多いですが、庶民生活の中で頻繁に遣り取りされる2,000レオン、1,000レオンのお札は特に痛むのが早いようです。例えば、路上で売っている揚げドーナツは2個で1,000レオン、屋台で食べる庶民的なライス&スープなら4,000レオン(チキンや魚を足すと8,000レオン、大きさによりそれ以上になる)。 因みに日本でも、相対的に使用頻度が高い5,000円札、1,000円札の平均寿命は1~2年と、1万円札の4~5年よりかなり短いそうです*。レオン紙幣のほうが日本円より痛むのが早いのか、シエラレオネ銀行が流通に不適当と判断する汚損度合いが日本銀行より著しく高いのか(おそらくその両方でしょう!)、今日もレオン紙幣を数える私の指は真っ黒になり…。 シエラレオネ銀行が1万レオンより高額な紙幣を新規発行**してくれて、古びた紙幣を数える手間が減ることを祈るばかりです。 *日本銀行ウェブサイト「銀行券の一生」より |
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