ほんの一歩進むと信じて 青年海外協力隊 渡辺まどか
ホンジュラスでは現在約40名の青年海外協力隊員の方が活動されています。その中でも、保健医療に関係する活動に従事されている隊員の方々とは、エル・パライソ県での事業で連携し、相乗効果を目指しています。
最近では、「エル・パライソ県安全なお産支援事業」での医師、看護師を対象としたエコー研修で助産師、看護師、保健師などの青年海外協力隊員4名の方々に、「日本の妊婦健診」について発表いただきました。
超音波診断装置の画面に見入り、研修受講者へ的確に診断法をアドバイスするのは、助産師の渡辺まどかさん。日本では助産師外来において、妊婦健診に携わり、エコー診断をされていた経験もお持ちです。今回は渡辺さんに執筆をお願いし、ホンジュラスの母子保健の状況や任地での活動をご紹介いただきました。(ホンジュラス事務所 浦上晶絵)
青年海外協力隊の助産師として派遣されています、渡辺まどかです。首都よりバスにて4時間程度を要する場所、ラパス県マルカラ市の母児*保健センターにて現在活動しております。私の任地や普段の活動を少々ご紹介させていただきます。
まず私の任地である母児保健センターでは、一日平均3件程度のお産があります。また日本のように電車や新幹線、道路の舗装がされていないため、遠方より母児保健センターに来院される妊婦は、一日かけてお越しになります。そのため妊婦健診の受診率は低く、必要な診察や検査を受けることができないまま、お産に至ることが多いというのが現状です。
しかしありがたいことに、道路や自宅でのお産を避けるため、マルカラ市は母児保健センターに隣接して「妊婦の家」があります。そのため、お産の進行が早いと推測される経産婦や遠方の妊婦は「妊婦の家」に滞在し、お産の“その時”を待ちます。
さて、続いては私の活動をご紹介します。大きく分けて主に現在は3点行っております。
1点目はその「妊婦の家」での保健指導です。滞在する妊婦のほとんどは、ベッドに横になり一日を過ごしています。そのため、妊婦体操を毎日実施し、お産や新生児に対する知識や技術などを伝えています。ホンジュラスでは日本と比較すると、ラテンのダンスや音楽は激しいのですが、運動はほぼしません。しかし、ホンジュラスの食事は安価である食事が高カロリーであるため、生活習慣病の罹患率が上昇しています。少しでも知識を普及させ、産後の改善、若年層の生活改善を期待しています。
2点目は看護学校での学生を対象とした授業を行っております。高校を卒業後、2年間看護学校に通学し、一年目は座学、二年目は実習というカリキュラムです。ただし、日本での授業とは異なり、身体の仕組みや薬剤の効能、疾患の機序などを理解するという時間を十分には設けられていないように感じられます。そのため、母児保健を担当して授業を実施し、臨床現場に必要な最低限の知識や技術を伝えています。
3点目は小中高校に行き、予防啓発活動を実施しています。ホンジュラスでは学校の授業に医療知識や保健教育を知る機会はありません。そのため、同僚と共に小中高校に行き、様々な疾患についての知識の普及や若年妊娠軽減のための性教育を実施しています。まだまだ性教育に対してはタブーとされている環境にあるので、課題は多い活動となります。
今後は「エル・パライソ県安全なお産支援事業」においての研修を参考に、ホンジュラス人の医療従事者に対して積極的に医療技術・知識講座を開催し、医療従事者の知識や技術の向上を目指して、普及していきたいと考えております。
様々な医療課題がホンジュラスにはありますが、その反面、私はホンジュラス人女性の強さに驚かされることも多々あります。キリスト教を信仰する女性が多いため、「すべてを運命」と解釈し、人や物に対して責め立てることはなく、自分の力でなんとかしようと立ち向かい、うまくいった際には神様に感謝する様は、人として器の大きさを感じ、頭がさがる思いです。このような場面では、人間の力、女性の力を感じます。
私のボランティア隊員としての任期は残すところ1年となりました。ホンジュラスでは現時点で多くの学びを得ることができました。そのためその学びに比例することができるように、私にできる最大限の活動を実施していきたいと考えています。
*「母児」とは母とその胎児もしくは新生児、乳幼児を指す言葉です。
(文中写真はすべて渡辺さん撮影)