世界水の日に寄せて ミャンマー事務所 佐藤幸江
3月22日は、国連が定めた「世界水の日」です。
日本では、蛇口をひねればきれいな水が当たり前のように出てきますが、世界では6億人以上が安全な水源へのアクセスがなく、毎日、5歳未満の子ども800人以上が不衛生な水や環境によって引き起こされる下痢症疾患で命を落としています*。世界水の日は、水の大切さを知ってもらい、このような世界の人々に対してどのように安全できれいな水を届けるかを考えるための日です。
ミャンマー北東部のラショー郡で実施している「シャン州ラショー地区における水と衛生・保健改善プロジェクト」では、水と衛生について厳しい環境にある山岳地帯の村で、安全な飲料水の確保やトイレの普及、母子保健に関する状況の改善などを目指し、保健衛生促進活動を実施する人材を育成するための研修、保健教育、簡易トイレや水供給施設の建設などを支援しています。今回は、プロジェクト対象村の一つであるルウェサン村の水にまつわる自主的な取り組みを紹介したいと思います。
ルウェサン村は約50世帯が居住する、ラショー郡東部の山岳地帯に位置する村です。道が整備されておらず車が通れないため、村を訪問するだけでも一苦労ですが、道中の景色は美しく、疲れを忘れさせてくれます。ルウェサン村を訪ねたとき、プロジェクトでは計画のなかった貯水槽が村に設置されているのを見つけ、村長のAik Siさんに話を聞くと、建設に至った経緯を話してくれました。
「1年半ほど前、AMDA-MINDSが開催した保健衛生教育に参加して安全な水の重要性について学んだので、その後、村のみんなと水問題について話し合いました。そこで水供給施設を自分たちの力で建設することが決まったのですが、どのようにすればよいかわからず、計画が進まないでいたところ、AMDA-MINDSが活動している他の村を訪問するスタディツアーに参加する機会を得ました。ツアーの中で、村人がAMDA-MINDSのサポートを受けて水供給施設を建設したことを知り、私たちも挑戦することにしたのです。」
「まずは、AMDA-MINDSのスタッフに計画の立て方、必要な資材、建設・修繕方法などに関するアドバイスを依頼し、村で建設を開始しました。資金や労働力の確保には苦労しましたが、なんとか完成させることができました。その後、教えてもらったことを活かし、なんと学校までも自分たちで建設することができたんですよ。きれいな水を飲めるようになっただけでなく、子どもたちが学校に通えるようになり、住民は喜んでいます。」
こうした村人自身の意欲に応え、プロジェクトでは今後、学校への水供給施設の設置を支援することにしています。村にずっといるわけではない私たちにできることは限られていますが、だからこそ人材育成が大事なのだと実感した出来事でした。実は、この村を担当している現地スタッフは、他の事業でAMDA-MINDSの研修を受けた別の村の元保健委員(保健改善のために活動する住民委員会のメンバー)です。自分の村で水供給施設を建設した経験を活かし、プロジェクトの計画を超えてルウェサン村の水供給施設建設の支援にも取り組んでくれたのです。自分の村に水供給施設ができたときの喜びをルウェサン村の住民にも味わってもらいたかったのかもしれません。
*参照:UNICEF (2017) Thirsting for a Future ~Water and children in a changing climate