コトゥトゥンカ村に水がきた! ネパール事務所 小林麻衣子

2019/01/23

2019年1月14日、ロシ行政地区コトゥトゥンカ村で水の供給施設が完成し、それを祝うお祭りが催されました。完成を喜ぶ子どもたちの踊り、お祝いのティカ*、ロシ行政地区長ら来賓者の挨拶にテープカットなど、笑顔と笑い声に包まれたにぎやかな1日となりました。
 

セレモニーでダンスを披露する子どもたち

来賓者関係者でテープカット

コトゥトゥンカ村は、ネパールの首都カトマンズから車で約4時間、幹線道路沿いのメインバザールから切り立った山道をガタゴト進んだ先の、入り組んだ谷あいにある小さな集落です。約66世帯の人々が自給のための農業で細々と暮らしていましたが、灌漑設備がなく、農業用水は天水に頼るしかありませんでした。そこに追い打ちをかけたのが2015年の大地震。コトゥトゥンカ村でも約7割の家屋が全半壊し、元々貧しかった村の人々は、家屋の再建や生計の立て直しのため、多くの負債を抱えることになりました。
 
しかし、村の人たちは負けていません。自家消費するための農作物に加え、換金作物を新たに栽培・販売することで農業収入を増やし、生計を立て直そうと考えたのです。そのために何より必要だったもの、それが水だったのです。
 
今回完成した水供給施設により、コトゥトゥンカ村の人々は、遠くの水源や水場まで何時間も歩くことなく、ネパール政府が定める最低水量**の水を、家の近くで容易に利用することができるようになりました。換金作物を栽培する畑への散水や家畜への水やりに加え、洗濯するのも身体を洗うのも、ずいぶんと便利になったと大変喜ばれました。
 

完成した水場を使う村の女性

お祭りに来ていたあるおばあちゃんが、涙ながらに「ありがとう。とても大きなことをしてくれたよ」と言ってくれたのですが、本当に大きなことをしたのは村の人、ひとり一人です。水源調査から資材の調達、資材運搬に施工作業。文字で書くとなんでもないことのように感じますが、建設現場は標高1,600メートルの断崖絶壁にあり、すべてが手作業で行われたのです。紆余曲折・試行錯誤を経ながらも、完成にこぎつけられたのは、水利用者委員会のリーダーシップと、総出で手伝った村人ひとり一人の努力があったからに他なりません。
 
祝賀会でのスピーチで村の代表が嬉しそうに話していたことが今でも心に残っています。
「この村は、親父たちの世代まではこのあたりでいちばん不便で貧しい村だった。でも、だからこそ村人たちの間に結束が生まれたんだ。俺たちは畑を耕し、山道を整備し、そして水を使うこともできるようになった。俺たちは力を合わせて困難を乗り越えるということを知っている。今ではここは豊かな村だ。俺は、俺たちの子どもや孫の世代までこの村のことを伝え、ずっと引き継いでいきたいと思っている。」
 
*お米にヨーグルトや赤い色粉を混ぜたもの。ネパールでは、幸せが訪れるようにと願ってお祝いごとの際、ティカを人々の額につける習慣がある。
**農村部の場合、生活用水と農業用水をあわせ1人あたり65リットル