ミャンマーの得度式 ミャンマー事務所 江橋裕人
こんにちは。ミャンマー事務所の江橋です。今日は多くのミャンマー人にとって人生の一大イベントである「得度式(とくどしき)」をご紹介したいと思います。
得度式- 昨今の日本ではあまり馴染みがないかもしれません。これは仏門に入って僧となるための儀式であり、敬虔な仏教徒の多いミャンマーではとても大切な宗教行事です。仏教徒であれば、人生で少なくとも二回は仏門に入るべきだとされています。一度目は5歳から18歳までの間に。そして二度目は18歳を過ぎてからです。
2018年11月、ヤンゴン事務所の総務・会計士であるキン・ニョ・イー(通称マニョ。女性です)が、8歳と5歳の息子二人の得度式を12月下旬に行いたいと相談してきました。これはいい機会だと思い、得度式について色々と教えてもらったのですが、ミャンマー人の信心深さや伝統を重んじる心、家族を思う気持ちの強さに改めて驚きました。多くのミャンマー人は家族親類が総出で、場合によっては1年もの時間をかけて準備をし、大きな出費をともなって得度式を実施します。マニョの両親は高齢ということもあり、孫の晴れ舞台を早く見せてあげたかったようです。
さて、実際の得度式はと言えば、必要な用意(袈裟など)を持たせた子どもを僧院に預けて終わり、という訳には行きません。マニョの場合、家の敷地内に大きな式場を設置し、子どもたちを僧院に送る前の5日から7日間ほどの間、お茶やお菓子、食事の用意をして来客をもてなし続けました。24時間、誰が来ても! 多くの村人がボランティアで手伝い、寄付もしてくれたそうです。日本のお通夜や葬式を近所の人が手伝う、といった感じでしょうか。地域の強い繋がりがうかがえます。
クライマックスは最終日(僧院に入る日=出家する日)とその前日。おもてなし会場では音楽やダンスも始まり、華やかさが加わります。最終日前日には、特別な衣装に身を包み、化粧をした子どもたちが目上の方々に感謝のプレゼント(軽食など)を渡します。昼食後、子どもたちは牛や馬に乗って村を2~3時間かけてパレード。今回は馬でしたが、象のこともあるそうです。さすがに象は村にいないので、レンタルとのこと。象レンタル、さすがミャンマーですね。そして剃髪し、最終日には僧侶に許可を求め、めでたく出家となります。
子どものために精一杯のことをしたいという親心は、日本もミャンマーも変わりません。どうしても足りなければ借金もします。マニョ一家の予算は1千万チャット(約70万円)。日本の感覚なら、庶民が1千万円近い高級車を買うほどの出費だと言えば、想像できるでしょうか。大変なことです。なお、得度式のためならお金は貯まると信じられているとのこと。農家なら収穫量が上がり、収入が増える! 厳しい暮らしの中、そう考えれば前向きにやっていけるのかな、と感じます。
番外編:
・得度式が決まってからは、マニョが子どもたちにパーリ語経典の勉強を指導したとのこと。まだ小さな子どもですから、日常生活ではお経を唱えませんよね・・・。
・子どもが幼いうちに、なぜ得度式を行うのか。大きくなると自我も芽生え、恥ずかしくて嫌がる子どもが多いからだそうです。妙に納得してしまいました。
なお、私には宗教学や人類学等の専門知識はなく、得度式を行った一人のミャンマー人から聞いた話をまとめただけです。従ってご紹介した内容は、ミャンマーにおける一般的な得度式の説明にはなりませんので、あしからず。