社会の変化を痛感 ミャンマー事務所 江橋裕人
新型コロナウイルス感染症が10年前に蔓延していたらどうなっていたか。当時、ミャンマーでは携帯電話やインターネットへのアクセスが限られていたため、誰とも話ができず途方に暮れていたかもしれません。
ミャンマーで最初の新型コロナウイルス感染者が発見された2020年3月23日前後から、AMDA-MINDSのミャンマー事務所を含め、在宅勤務がミャンマー社会へ急速に広がりました。携帯電話を通じたインターネットの広がり無くして、こうした働き方は難しかったでしょう。
2010年当時、事務所で会う以外にスタッフ同士がコミュニケーションを取る術はありませんでした。当時の固定電話普及率は4%で携帯電話普及率は13.6%。スマホで電話ができるようにするためのSIM(シム)カードは1枚2,000ドル(いまのレートで約21万円)とも言われ、手を出せる人は皆無。私は業務用にSIMカードと携帯電話(いわゆるガラケー)をレンタルしていましたが、ミャンマー人の同僚は携帯電話がないどころか、固定電話ですら持っていませんでした。そんな状態で外出が制限されたとしたら、事務所に行けずコミュニケーションも取れず、私はきっと自宅でひとり途方に暮れていたことでしょう。
ところが今は、誰もが携帯電話を持っています。多くの人にとって高嶺の花だったSIMカードの値段は2012年から徐々に下がっていき、2014年には現在と同じ約100円となり、それ以降、携帯電話は爆発的に普及しました。2017年の調査では、都市部の93.4%の世帯に携帯電話があったとのこと。すでに時代はガラケーからスマホになっていたため、ミャンマーにおける携帯電話の普及はスマホから始まりました。
インターネットの利用も急速に広がってきました。2010年には、自宅でインターネットを利用できた人はほぼいませんでした。ヤンゴン事務所ではインターネットを使っていましたが、ADSLとダイヤルアップの併用で接続速度が遅く、数時間の不通も日常茶飯事。そんな時に限ってどうしてもインターネットが必要になるもので、そんな時はホテルのカフェやレストランに行ってメールを送受信したりしていました。それが今では携帯電話を使っていつでも誰でもインターネットを利用することができます。さきほど引用した2017年の調査によれば、自宅にインターネットを引いている世帯は国全体で0.16%に留まっていた一方、都市部に住む人々の41%が一週間以内にインターネットを使っていたそうです。スマホの通信費用はプリペイドカードで小額から購入できるため、多くの人が自分の懐事情に応じて利用していたことが伺えます。携帯電話普及のおかげで多くの人がインターネットの恩恵を得られるようになったわけです。
このように、ミャンマーでもコミュニケーションは本当に容易になりました。スタッフがどこにいてもオンラインミーティングが可能になり、電話はもちろん、メールやチャットで円滑なコミュニケーションをとることもできます。こうした正の変化もあり、新型コロナウイルス感染症による負の影響にも負けることなく、スタッフ一同、日々各地の事業を推進しています。
江橋裕人(えばしひろと)
ミャンマー事業 事業統括
エチオピア飢饉やソマリア内戦のニュースを見たことがきっかけでアフリカへの興味を持つ。大学卒業後、民間企業に勤めたのち、イギリスの大学院でアフリカ地域研究(政治学)と国際関係論の修士号を取得。NGO職員としてアフリカのザンビアに3年半駐在後、2010年にAMDA-MINDS入職。今の趣味はジョギング。日本にいた頃はオートバイ(愛車はBMW R1200GS)でのツーリング。岡山のお気に入りスポットは、旭川・百間川沿いのジョギングコース。茨城県出身。