「姿勢の違い」からみえた日本人とザンビア人 青年海外協力隊 藤田朋香
こんにちは。青年海外協力隊、公衆衛生隊員としてザンビア、ンドラ郡のカブシクリニックに派遣中の藤田です。SCHePS(都市コミュニティ小児保健システム強化プロジェクト)の連携隊員としてザンビアに赴任し早9か月。今回は日常生活の中で気づいた、人々の「姿勢」についてご紹介したいと思います。
朝の出勤時やコミュニティを歩いている時、人々が外で料理や掃き掃除、洗濯している姿をよく見かけます。立ったまま少し足を開き、背中を丸めず腰を曲げて、木炭の火にかけた鍋をかき回したり、草を束ねた柄の短い箒で地面を掃いていたり、地面に直接置いた桶で洗濯していたりします。また、落し物を拾い集める時でも、同様の姿勢で拾い集めていました。
一見、ちょっと辛そうな姿勢に見えるのですが、ザンビアの人々はこの体勢で作業することを苦にしません。また、毎日そのような姿勢で長時間作業し、腰痛にならないのか心配してザンビアの中年女性に聞いてみたところ、笑顔で「全く平気、腰痛ないわよ!」と言っておられました。ちなみに、アフリカ人の柔軟性が優れているのかと思い、両足を揃えて膝を曲げず手を地面につけられるかチャレンジしてもらったところ、それはできませんでした。柔軟性は人それぞれのようです。
しかし、この姿勢の違いはやはり、人種による骨格の違いから来ているようです。日本人が属するモンゴロイドは、骨盤がやや後傾、歩行時には膝関節と大腿四頭筋をよく使います。他方、アフリカ人が属するネグロイドは、腸腰筋が発達、骨盤が前傾しており、大臀筋(だいでんきん)と大腿二頭筋をよく使って歩行するそうです。(写真参照。写真はめでぃっくより。)
アフリカ女性のヒップがたとえふくよかでも垂れることなく張っているのもこのためのようです。試しに、ザンビア人に、「たくさん歩くとどこが筋肉痛になる?」と尋ねてみたところ、「ここ(大腿の後ろ)とお尻」と答えてくれました。なるほど、私は足が棒になるほど長時間歩いても、臀部(でんぶ)が筋肉痛になることはありません。このような骨格の違いから、歩行や作業姿勢の苦楽の違いもあるのだと納得しました。
また、ザンビアではこのような姿勢で毎日家事をしていても、あるいは重い物を頭に載せたり背負って頻繁に運んだりしても、日本のように背や腰の曲がった高齢者に会うことはほとんどありません。どの高齢者の方も、背筋がしゃんとしています。背が曲がるのには、加齢による骨密度の減少が関係していると言われますが、上記の骨格の違いを調べている際、ネグロイドの特徴として「骨密度が高く、骨粗しょう症に成り難い」と書かれている一文を見つけました。なんて羨ましいことでしょう。
実は私、時々思い出したように将来の骨粗しょう症を気にしてカルシウム摂取を意識していたのですが、ある日の昼食に牛乳を摂取していたところ、「太るわよ~!」と職場の同僚らに笑われました。いつも飲み物といえば、炭酸飲料か、大量の砂糖入り紅茶またはコーヒーばかり飲んでいる人々にそんなこと言われるなんて…と思いつつ、そういえばザンビアでは、日本ほどカルシウム摂取が強く励行されていないなぁと気が付きました。
日本では、ビスケットやふりかけなど「カルシウム入り」を謳っている商品が多く見られますが、ザンビアでは「ビタミンA入り」の食品は多く見かけられますが、カルシウムは強調されていません。ここには、骨粗しょう症になりにくいという背景があったのでしょうか。または、日本がカルシウム摂取を主張しすぎる社会なのでしょうか。そのため、牛乳を飲んでいた時も、ザンビア人からはカルシウム摂取のためなんて認識されなかったのかと思いました。
姿勢、ライフスタイル、食文化…。このように、日常で垣間見るザンビアと日本のささいな違いから、つくづく自分は日本人だなぁと強く感じます。こんなに日本人を感じている私の心とは裏腹に、多くのザンビア人は今日も間違いを恐れず「中国人!」と満面の笑みで手を振ってくれます。
こんな発見や人々との交流を楽しみつつ、さらに心も体も骨太でたくましくなっていきたいと思う今日この頃です。