森が失われつつあるマダガスカルで環境保全プロジェクトを開始
海外事業運営本部 田中一弘

2021/07/05

「たった1年で、千葉県の面積に相当する森林が失われた国」
 
これが、アフリカ南東部沖に浮かぶ島国マダガスカルのことだと聞いて、驚かれる方もいらっしゃるかもしれません。それもそのはず。マダガスカルの一般的なイメージとしては、某有名アニメのタイトルにはじまり、バオバブの木、バニラビーンズ、キツネザルにアイアイ…など、豊かな自然環境がまっさきに思い浮かぶのではないでしょうか。
 
しかし実際には、この60年間でマダガスカルの森林の44%もが失われてしまいました。2017年には、たった1年間で、千葉県の面積に相当する51万ヘクタールの森林が消失しています。
 
無計画な森林伐採、農地への転用などが原因とされており、森林消失の影響は、CO2排出量の増加、マダガスカル固有の生物多様性の喪失、土壌流出など多岐にわたっています。そしてそのしわ寄せの多くが、国民の約8割を占める貧困層の生活に及んでいるのです。
 

森林破壊のしわ寄せは自給自足の暮らしを送る貧困層の生活に

 
2021年4月に開始した新プロジェクト「アチモンジャン郡における環境保全を通じた持続可能な生計向上プロジェクト」対象地のツィアファヒ・コミューンはその代表例と言えます。人口のほとんどが農家で、自家消費用にコメを、現金収入用にイチゴなどを栽培していますが、森林伐採による土壌劣化と耕作地の減少という深刻な課題に直面しています。
 
コミューンを流れるシアオニ川

 
ツィアファヒ・コミューンには2本の川(シアオニ川とイコパ川)が流れていますが、森林伐採の影響による川の氾濫で、周りの田畑にまで土砂が流入し、耕作できない状況に追いやられているのです。
 
川の氾濫で土砂が流入し、耕作できなくなった田んぼ

 
そこでこのプロジェクトでは、川岸に植林をして耕作地を保護するとともに、環境に調和した農業を実践することで、長期的に安定して作物が収穫できるようになることを目指します。さらに、これらの取り組みが持続するよう、地域住民の組織化と人材育成を並行して進める予定です。
 
現地での活動は、「CEMES*(セメス)」というNGOと連携して実施しています。CEMESは環境と健康の課題に対して、様々な分野の知恵を活用して、コミュニティの能力強化を通じて解決していくことを目的とした団体で、まさにこのプロジェクトの実施にうってつけのパートナーです。
 
なお、このプロジェクトは、トヨタ環境活動助成プログラムをはじめ皆様からのご支援により実施します。これからも応援、よろしくお願いします。
 
*Cercle d’Etudes Multidisciplinaires sur l’Environnement et la Santé(フランス語で「環境と健康に関する学際的研究サークル」という意味)
 

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この記事を書いたのは
田中一弘(たなかかずひろ)
海外事業運営本部 プログラムコーディネーター


大学3年のゼミで、国連職員から難民支援について話を聞き「国際協力を仕事にすること」を決意。国際開発学修士を取得後、2000年にアムダ海外事業本部(アムダマインズの前身)入職。アンゴラでの国内避難民支援など、アフリカ、中南米、アジアの様々な国・地域でのプロジェクトに従事。趣味はトレイルランニング、天体観測、サッカー観戦。岡山のお気に入りスポットは、冬の早朝の操山。きりっと澄んだ空気とオレンジ色の朝焼けが最高。兵庫県出身。