ドミニカ共和国で難民・移民支援を学ぶ
ホンジュラス事務所 奥田鹿恵子

2025/04/15

照りつける太陽、青い空と海、陽気な音楽、人懐っこい人たち。「これこれ!JICA海外協力隊で赴任した10年前と変わらないドミ共(ドミニカ共和国)!」とうれしくなる一方、ハイチ人がとても多いことに気がついた。建設現場で働く人、高架下で野宿する人、靴磨きをする子どもたち。その大半は、隣国ハイチからドミ共に逃れて来た非正規移民であろう。

 

ドミ共で暮らすハイチ人の存在に対する私の関心は数年前、たまたま入った本屋でハイチに関する本を手にしたことをきっかけにグッと高まり、難民・移民及びホストコミュニティ支援について学ぶことを目的に、現地NGO「CEDESO(Centro de Desarrollo Sostenible)」での実務研修に参加した。

  • ドミ共の首都サント・ドミンゴ
  • CEDESOの本部事務所に向かう途中にあるオコア湾

観光地として有名なボカチカビーチまで、車でほんの30分の距離にある首都サント・ドミンゴには、総人口の10分の1が住む。大型ショッピングモールや高級ブランド店が立ち並び、経済的には、私が駐在しているホンジュラスの首都よりも発展している印象だ。

 

CEDESOの本部事務所は、首都から車で3時間離れた南西部のバオルコ州にある。ハイチとの国境までは、そこからさらに2時間ほど。その間に軍の検問所が4か所あり、ハイチ人の移動が厳しく監視されている様子だ。

 

カリブ海のイスパニョーラ島、東側3分の2が旧スペイン領のドミ共で、西側3分の1が旧フランス領のハイチ。ハイチは、1804年に誕生した世界で初めての黒人による独立国家だ。しかし、独立と引き換えに背負うことになった莫大な賠償金をはじめ、デゥバリエ元大統領による独裁政治、2010年及び2021年の大地震、そして近年の武装ギャングによる暴動の激化と、大きな問題が続いてきた。こうした背景の中、多くの人が国外に出てしまい、隣国であるドミ共には現在、100万人以上のハイチ人が住んでいると推測されている。

インデペンデンシア州の国境検問所

国境に設置された4か所の検問所を通らず、山を越えて別の場所からドミ共に入るハイチ人も多いとのこと。CEDESOは、そんな両国の主に国境地域において、ハイチ人の難民・移民及びホストコミュニティ支援に取り組んでいる。

  • 拘束現場を訪問し、ハイチ系移民の身分証明書を確認するCEDESOスタッフ
  • 家庭を訪問し、ハイチ系移民の生活状況をモニタリングするEDESOスタッフ
    家庭を訪問し、ハイチ系移民の生活状況をモニタリングするCEDESOスタッフ

2024年10月、ドミ共現政権は、毎週1万人のハイチ人を国外追放する計画を打ち立てた。法律では未成年や妊産婦等の拘束は禁止されているにも関わらず、肌の色が黒いからという理由だけで、時には家の中まで押し入って連行し、食べ物も提供しないまま一日中留置所に拘束、ハイチに強制送還するケースが後を絶たない。CEDESOは、軍による拘束や強制送還をモニタリングし、必要に応じて釈放の交渉を行っている。

 

また、ハイチ人と行政機関との懸け橋にもなり、各種手続きをサポートしたり、保健医療に関する啓発活動を行ったりもする。

  • 健康保険についてのワークショップを行うCEDESOスタッフとボランティア
    健康保険についてのワークショップを行うCEDESOスタッフとボランティア
  • 「水があれば、もっと大きく育つんだけどね」と言ってスイカを見せてくれた農家
    「水があれば、もっと大きく育つんだけどね」と言ってスイカを見せてくれた農家

サトウキビやカカオをはじめ、ドミ共人が経営する農園では、多くのハイチ系移民が働く。法律で定められた農民の最低賃金は日給400ペソ(約1,000円)。CEDESOは、彼/彼女らが不当な扱いを受けていないかをチェックしながら、経営者と調整・交渉を行っている。

 

「非正規移民・滞在者をハイチに強制送還するのは当たり前だ」「ハイチに帰ったら命が危ない。ドミ共でも安定した仕事はないけれど、ここで暮らしたい」どちらの意見も理解はできるが、いまの私には聞くことしかできない。

 

今回の研修で学んだことを糧に、各国の難民・移民をめぐる動向に目を向けながら、誰もが尊厳を持って幸せに生きることができるよう、NGOが、私個人が何をすべきか、追求し続けたい。

 
※本実務研修は、外務省主催2024年度NGOスタディ・プログラムの支援を受けて実施されました。
 
 

この記事を書いたのは
奥田 鹿恵子(おくだ かえこ)
ホンジュラス事務所 業務調整員


 
ブラジルやメキシコの子どもを支援する団体でボランティア・インターンをしたことが、国際協力の道をめざすきっかけに。民間企業での市場調査、NGOでの広報業務、青年海外協力隊(中米ドミニカ共和国でのコミュニティ開発)を経て、2015年にアムダマインズ入職。趣味はYouTubeで楽しむマーシャルさんとのダンス・エクササイズと映画鑑賞。岡山で過ごすお気に入りの時間は、岡山城や後楽園脇を流れる旭川沿いの散歩。奈良県出身。

 
 
 

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