誰もが安心して「当たり前」の医療を受けられるようにするために シエラレオネ事務所 西野 義崇

2019/04/25

シエラレオネでは、妊産婦や5歳未満児などは医療が無料で受けられることになっています。しかし、保健医療サービスの体制が整っておらず、長い道のりを歩いてせっかく診療所にたどり着いても、十分な医薬品がなかったり、保健医療スタッフのスキルが不十分だったりして、満足な医療を受けられないという事態が常態化しています。一方で、それらを管轄する県保健管理局、さらには国の保健衛生省が各診療所の状態を把握し、適切な指導を行う仕組みも十分に機能していませんでした。

AMDA-MINDSは、アスカ・ワールド・コンサルタント株式会社と共同で、JICAから「サポーティブ・スーパービジョン・システム強化プロジェクト」の業務委託を受けており、同国の保健医療システムを改善するための活動を行っています。「スーパービジョン」とは、指導・監督といった意味で、「サポーティブ・スーパービジョン」というのは、診療所のスタッフや県保健管理局の至らない点を叱責するのではなく、問題の原因を共に探り、解決の糸口を見つけ、必要なサポートを行う、という活動になります。しかし、様々な原因が複雑に入り組んで起きている問題の因果関係を論理的に分析し、それぞれに適切な対処策を考えることは、そう容易なことではありません。

私たちは、保健衛生省や県保健管理局の職員に対し、問題を論理的に分析できるようになるためのトレーニングを行いました。また、相手から適切な答えを引き出すことができるよう、コミュニケーションスキルのトレーニングも行いました。

問題を論理的に分析するためのトレーニングの様子

保健衛生省のスーパーバイザーたちが各県を訪問して行うスーパービジョン活動は、今年(2019年)3月にはプロジェクト開始以来、9回目を迎えました。各県を訪ねる前に事前会合を行い、前回のスーパービジョン活動で見つかった問題点を振り返った上で、その後どうなったか、新しい問題はないか、を見るために各県を訪問します。

県保健管理局でのワクチンの保管状況を確認するスーパーバイザー

チェックリストに沿って確認しつつも、より深い原因を聞き出すために、じっくりと会話をすることが求められます。このようにして見つかった問題点や原因、短期的な対処策と長期的な解決策、誰がいつまでに何をしなければならないか、を報告書にまとめ、事後会合で各チームの発見を共有し、今後の方向性について話し合います。

県病院の医薬品保管倉庫を視察するスーパーバイザー

「PDCAサイクル」は日本でもおなじみですが、Plan(発見された問題点の解決策を立案する)→ Do(解決策を実行する)→ Check(解決策を実行する過程がうまくいっているかどうか振り返る)→ Act(もし、課題が見つかった場合には軌道修正をする)というサイクルを回すことによって、この国の保健医療サービスは着実に改善されてゆきます。しかし一方で、国民全員に満足のいく医療を提供できるようになるためには、資金や人材が圧倒的に不足しており、保健衛生省のスーパーバイザーたちが県保健管理局スタッフや診療所スタッフとともに、知恵を絞り続けています。