ハードとソフトの二刀流で母子保健を改善します! ホンジュラス事務所 白川良美
中米のホンジュラス共和国は、北海道の約1.3倍の国土面積に959万人の人口があり、国内の貧困率は60.9%と高く、中南米・カリブ地域では、ハイチに次ぐ最貧困国となっています。日本政府は、貧困削減及び持続的成長のため、保健医療、教育、防災などの分野で協力をしています。
特に支援ニーズの高い分野が母子保健で、妊産婦死亡率は129人(対出生10万)と、日本の1960年代に近い水準にあります。地方農村部においてはさらに状況が悪く、本事業対象地のテウパセンティ市もその一つです。保健施設や機材の未整備、保健所スタッフの能力不足などから、十分な母子保健サービスが提供されていません。こうした状況を改善するため、2019年3月から外務省の日本NGO連携無償資金協力事業として、保健所施設の改修および超音波診断装置(エコー)の整備、保健行政スタッフへの研修、妊婦・母親を対象にした保健教育に取り組んでいます。
今回は、保健所の設備の改善(ハード面)と保健スタッフの能力向上(ソフト面)の2つの活動について報告します。
保健所の改修工事で環境改善
テウパセンティ保健所は、築後約30年を迎え、建物全体の老朽化が目立っていました。破損した屋根から浸透してくる雨水で、保健所内は全ての部屋で湿気がひどく、天井や壁にはカビが目立ち不衛生でした。そこでトタン製の屋根に交換し、その際、通気性を改善するため、壁(ブロックを積んだもの)と屋根の間にセメントを追加して天井を高くしました。
保健所スタッフからは「前よりも涼しくなって快適になった」との声が聞かれました。私自身、改修工事前の4月と改修後の6月とでは、同じ場所にいるとは思えないくらい体感温度が違うことに驚きました。天井を高くするだけで快適な生活が送れるとは、とてもエコな方法だと感心したものです。
また、「改修工事の終了時にはきれいな保健所を見せたい」という保健所スタッフの要望に応え、市役所が電気の配線やペンキを支援してくれました。このようなハード面の支援は、すぐに効果が表れるのが魅力だと感じるとともに、プロジェクトをきっかけにして、保健所と市役所との連携が強化されるといいな、と思いました。
保健所スタッフの能力が向上
ホンジュラス事業では数年にわたり、安全な出産のために妊婦に対して超音波検査を推奨しています。妊娠中に超音波検査を受けることで、出産予定日、胎児の健康状態、胎盤の位置が確認できるため、ハイリスク妊婦の早期発見につながります。本事業では自身のクリニックで超音波検査を行なっている医師を外部講師として招き、保健所の医師・看護師を対象に超音波診断装置の使用方法研修を実施しました。
研修のはじめには超音波装置に触れることすらためらう保健所スタッフもいましたが、研修が進むにつれて、少しずつ超音波診断技術を習得し、自信を持って計測出来るようになっていきました。研修を受講した医師は、「この研修のおかげで、今年の7月には25名の妊婦に超音波検査をすることが出来た」と誇らしげに話してくれました。
医療従事者に対して就職後に技術指導やフォローアップ研修を行なうことがホンジュラスでは少ないため、この研修を通して医療スタッフが技術を習得できたことは、大変嬉しく思います。今後、長期にわたりテウパセンティ市の安全なお産に貢献してもらいたいと願うばかりです。残りの活動も保健所スタッフと協力し、妊婦さんに安全なお産が提供できるよう頑張ります。