子どもの栄養改善を目指したコミュニティでの取り組み
海外事業運営本部 田中一弘
マダガスカルでは、首都近郊のアナラマンガ県アチモンジャン郡において、栄養改善のための行動変容を目指した活動を実施しています。対象地は、同郡のアンカズトゥフ村とアンタンズナ村で、人口は2村合わせて約5,300人。マダガスカルの高地ならではの赤土と青い空、そして緑のコントラストが美しい場所です。
そんなのどかな風景とは裏腹に、子どもたちの栄養状態はとても深刻です。例えばこの2村で実施した調査によると、3歳未満児の実に44.5%が発育阻害であり、その背景には、授乳方法や食生活に課題があることも明らかになりました。発育阻害とは、慢性的な栄養不良により発育が遅れ、年齢に対して身長が著しく低い状態にあることを意味します。慢性栄養不良は脳の発達にも大きな影響を与えます。そこでAMDA-MINDSは、現地で栄養改善活動の経験を持つNGO「ASOS(アソス)」と連携して、子どもの栄養改善に向けた活動を2020年1月に開始しました。
まず行ったのは、子どもたちの栄養状態に関する調査結果を、コミュニティの住民と共有することです。村ごとに会合を開き、プロジェクトのスタッフが村の子どもたちの栄養状況などを分かりやすくグラフにして説明しました。説明を聞いた村の代表者、母親、地域ボランティア、保健センタースタッフからは、発育阻害の子どもが多い理由として「親の栄養に関する知識が不足している」「食事のバランスが良くない」「衛生環境が悪い」などがあげられました。
その後、この状況を改善するために、各村で何ができるかを考え、活動計画をまとめました。みんながそれぞれの立場から、子どもたちの栄養改善のために何ができるかアイデアを出し合い、現実的な活動がひとつずつ計画書に記載されていきました。計画書には、いつ、誰が、どこで、何を、どのように行うかが明記されています。
こうして始まったことの1つが、毎週水曜日に開催されている母親会合です。子どもの月齢別(0~6ヵ月、7~11ヵ月、12~23ヵ月、24~35ヵ月)に開催されており、子どもの身長体重測定と栄養教育が行われています。毎回20組前後の母子が参加していて、6ヵ月未満の子どもには完全母乳哺育が重要であることや、母親自身の栄養や家庭の衛生環境も子どもの栄養に大きな影響を及ぼすことなどを母親が学ぶ貴重な機会になっています。こうしたコミュニティでの地道な取り組みが、子どもたちの栄養改善の優良事例となって、地域全体に広がっていくよう、今後も活動を続けていきたいと思います。
なおこの活動は、立正佼成会一食平和基金、公益財団法人テルモ生命科学振興財団をはじめ、みなさまからのご支援により実施しています。
田中一弘(たなかかずひろ)
海外事業運営本部 プログラムコーディネーター
大学3年のゼミで、国連職員から難民支援について話を聞き「国際協力を仕事にすること」を決意。国際開発学修士を取得後、2000年にアムダ海外事業本部(AMDA-MINDSの前身)入職。アンゴラでの国内避難民支援など、アフリカ、中南米、アジアの様々な国・地域でのプロジェクトに従事。趣味はトレイルランニング、天体観測、サッカー観戦。岡山のお気に入りスポットは、冬の早朝の操山。きりっと澄んだ空気とオレンジ色の朝焼けが最高。兵庫県出身。