「いのちをつなぐ」救急体制を支援しています

2021/09/07

空っぽで暗闇を走る救急車


 
ホンジュラスの山間地、人口46,000人のテウパセンティ市に、たった2台しかない救急車。昨年までは1台が故障、もう1台は老朽化しているものの、かろうじて動かせたため、救急車としての装備が何もない空っぽのままでも、使わざるを得ない状況でした。
 
住民の「いのちをつなぐ」救急車。2台とも老朽化が激しいうえ、患者対応に必要な酸素マスクも 医療モニターもなく、中は空っぽでした。

 
実はテウパセンティ市の救急体制は、地元赤十字のボランティアに頼るところが大きいのが実情です。 ホンジュラスには、保健行政が救急車を運用している地域と、保健行政の予算や人手が不足し、行政以外の機関に頼らざるを得ない地域とがあるのですが、テウパセンティ市の場合は後者にあたります。
 
「僕たちは住民のためにボランティアとして患者の搬送を手伝っていますが、車両整備やメンテナンスの費用までは負担できないのです」と語るのは、赤十字ボランティアとして救急搬送のリーダーを務めるデニスさん。

同じく赤十字のボランティアとして救急車の運転手を務めているロランドさんは「救急車のタイヤがすり減っているので、これまで道の途中で何度パンクしたことか…。その上、前方のライトがつかないのです。救急車なのに、暗闇の中を無灯火で走らなきゃならないんですよ。日本では考えられないでしょう?!」と、現場の窮状を訴えていました。
 
 
当たり前のものが当たり前にある安心


 
テウパセンティ市は山間地ということもあり、元々交通の便が悪い地域。唯一の公共交通機関であるバスは1日に1便のみ。最寄りの診療所まで歩いて3時間という住民はざらです。そのような場所で、患者の緊急搬送に欠かせない救急車がこの状態では、助かるはずの命も助からない…そう考えた私たちは、救急車の整備を支援することを申し出ました。
 
2021年4月に開催したキックオフミーティング。救急車を管理する赤十字の担当者やボランティアらと、整備が必要な箇所や、整備中の代替救急搬送体制について確認し合いました。

 
救急車の修理箇所は、タイヤ・エンジンオイル・フィルター・冷却装置用水の交換にはじまり、ブレーキ・ライトの修理、医療機器を使用するための電気回路や患者用の椅子の設置、運転席と患者スペースを分けるアクリル板(新型コロナウイルス感染対策)の設置に、外装塗装と多岐にわたりましたが、地元の業者がしっかり修理してくれたおかげで、7月に1台、8月にはもう1台が、万全な状態で走行できるようになりました。
 

  • 救急車の車両整備には、1台あたり約1か月かかりましたが、地元の業者がしっかり修理してくれました。
  • 修理を終えた救急車。ライトもつくようになり、夜間走行の不安は激減。

運転手のロランドさんがこんな喜びの声を寄せてくれました。「やっと前方ライトがつくようになったので、これで夜間も不安なく運転できるようになりました。実は村人にとっても助かることなんですよ。暗闇の中で、ライトが着いていない救急車って、意外と見つけにくいですからね。常に稼働できる救急車があることは、自分にとってはもちろん、住民にとっても本当にうれしいことなんです。安心するんですよ。当たり前のものが、当たり前にあることに」。

救急搬送リーダーのデニスさんもこう付け加えてくれました。「大きな課題が解決して本当にうれしく思っています。走れるようになった2台の救急車は、すでに多くの村々に出動していますよ」。
 

救急車が修理されてから、以前にも増して精力的に活動しているデニスさん(中央)とロランドさん(右)。インタビューに答えるハキハキとしたその大きな声から、日々の充実ぶりがうかがえました。

 
次は「中身」と「技術」です


 
見違えるような変身を遂げた救急車ですが、次に必要なのは「中身」です。患者対応のための酸素マスクや医療モニターなど、医療機材を調達して設置していきます。同時に、もう1つ必要なのが「技術」です。運転手やボランティアらを対象に、応急処置技術を高めるための実践型研修を実施する予定です。村人の「いのちをつなぐ」救急搬送体制の確立にむけ、今年後半も歩を進めていきます。
 
※この活動は、フェリシモ「地球村の基金」を通じて活動に賛同して下さった方からの支援と、アムダマインズに寄せられたご寄付を活用しています。引き続き、皆さまからの応援をよろしくお願いします。
 
 

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