忘れられないコーヒーの味 ~ゴルカ郡コーヒー農家の偉大な前進
ネパール事務所 小林麻衣子

2024/02/27

みなさん、ナマステ(こんにちは)。

ネパールのビクラム歴10番目の月であるマーグ月の1日に(2024年1月15日にあたります)、ゴルカ郡サヒッドラカン地区で、「農業フェスティバル」が盛大に開催されました。

これは、毎年この日に地区行政が主催する一大イベントで、村中の農家や農業グループなどが自ら生産したものの展示や販売を行う他、顕著な努力や功績が認められる個人やグループが表彰される日でもあります。

 
イベント会場に集まった地域の人々。奥の家屋では2階や屋上から見物する人も!

アムダマインズは2021年から、この地区と、隣接するガンダキ地区の2地区でコーヒー栽培の普及支援を行っており、ちょうどこの日が「ネパールコーヒーの日」でもあることから、対象地域のコーヒー栽培農家さんと一緒に同イベントに出展することにしました。

ちなみに、「世界コーヒーの日」は、西暦では毎年10月1日に設定されているのですが、ネパール独自の暦に沿った10月1日に祝うというのが、なんともこの国らしいです。

 
アムダマインズのブース。イベント開始から終了までたくさんの人でにぎわいました。

さて、この日、アムダマインズのブースで用意したのは、コーヒー栽培・加工のプロセスを紹介する展示、焙煎と抽出の実演、そしてコーヒーの試飲・販売です。

村には大掛かりな焙煎機はもちろん、抽出に必要なエスプレッソマシンやコーヒーメーカーもありませんから、すべてがローカルメイド。深いアルミの鍋に入れた生豆を、束ねた菜箸(のようなもの)でかき混ぜながら焙煎し、ミキサーで粉砕した豆を手鍋で軽く煮出し、茶こしでこしてカップに注げば立派なコーヒーの出来上がりです。

焙煎の芳ばしい香りに誘われて、ブースの周りには人だかりができました。

1月のネパールは日本と同じく、1年の中でも特に寒い時期。あたたかいコーヒーに来場者もほっと一息。

用意した300杯分の試飲用コーヒーはあっという間になくなり、「お金を出してでも飲んでみたい」という人たちのために販売用焙煎豆の袋も開けてコーヒーを用意したところ、さらに50杯ほど飲んでもらうことができました。また、「家で飲めるなら焙煎豆を買って帰る」という人もおり、その日だけで約9,000ルピー(約10,000円)もの売上げがありました。この地域の農家1世帯あたりの年間平均収入が約70,000ルピーであることを考えると、上々の結果です。

対象地域から出展者として集まった22人の農家さん、そしてアムダマインズのスタッフが一丸となり、コーヒー栽培による生計向上の可能性だけではなく、そのおいしさも含めたコーヒーの魅力を、村中の人たちに伝えることができました。

ゴルカ郡におけるアムダマインズの取り組みに加え、環境配慮や森林保全について来場者に説明する現地スタッフのGautam(右端)。

中には、「家でもコーヒーの木を栽培しているけど、こうやって飲むのは生まれて初めてだよ。忘れられない味になるなぁ」と顔をほころばせる人もいました。さらにうれしいことに、毎年5人に授与される「ベストファーマー賞」に選ばれたのは、全員がアムダマインズの活動でコーヒー栽培をしている農家さんたちでした。

このイベントが、既にコーヒーを栽培している農家にとってはもちろん、新たにコーヒー栽培に挑戦しようとしている他の農家にとっても、大きなモチベーションになったことは言うまでもありません。

いつの日か、農家さんたちが「ゴルカ郡でコーヒー栽培をやっている」と胸を張って言えるようになる日が来ることを信じ、また日々の活動に励みたいと思います。

  なおこのイベントは、2023年度経団連自然保護基金からの助成により実施しました。  

小林麻衣子(こばやしまいこ)
ネパール事務所 事業統括

外国語の学習が好きで、大学ではヒンディ語を専攻。バックパックを背負って毎年インドを訪れる。大学院を休学して長期滞在したインド・ビハール州の農村で、村の人たちと生活を共にしたことが「地域開発」に興味を持つきっかけに。国際学修士を取得後、青年海外協力隊員としてスリランカで活動。2008年にアムダマインズ入職後は一貫してネパール事業に携わる。最近はまっているのは、自宅でのパン作り。一大決心して導入したホームベーカリーとオーブンのおかげで、食生活の充実だけでなく娘とも楽しく料理できてQOLが爆上がり。岡山県出身。


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