女性が笑顔で活躍する社会へ~NGOと行政が共に紡いだ3年間
ネパール事務所 小林 麻衣子
少し以前にさかのぼりますが、2023年12月末をもって3年間続いた「乳がん・子宮頸がんスクリーニングキャンププロジェクト」が終了しました。この事業は、第一三共株式会社(本社:東京都中央区)、AMDAネパール支部ならびに現地行政機関との連携のもと、実施したものです。
2021年1月に始まった本事業は、開始早々コロナウイルス感染症(COVID-19)によるロックダウンに見舞われ、予定していた活動が実施できない、医療資機材が調達できない、など数々の困難に直面し、1年次が終了する時点では、当初設定した目標を本当に達成できるのかどうか不安を抱いていたことを、今となっては懐かしく思い出します。
この事業は、カトマンズ盆地の北側に位置するゴカルネシュワル市を対象地として、30歳から60歳の女性における、乳がん・子宮頸がんの検診受診率の向上を図るもので、①モバイルクリニックを通じた遠隔地における検診機会の提供、②公的保健施設における一次検診サービスの開始、③コミュニティでの啓発活動、を主な活動として取り組んできました。
1年次こそ、計画通りに活動できずもどかしい思いをしましたが、2年次以降は、市行政からの盤石なサポートも得て、すべての活動において目標値を上回る成果をあげることができました。事業目標として設定していた「対象年齢女性の検診受診率が31%から62%に向上する」については、事業終了時で65%を達成するという結果となりました。
そしてなによりも、この事業で特筆すべきことは、事業期間としては終了した現在でも、市行政の独自予算によって、モバイルクリニックによる遠隔地での検診サービスが継続されているということです。
ゴカルネシュワル市役所は、事業期間中、精密検査が必要となった検診受診者に対して交通費や検査費用を負担する他、がん治療を受けている人に対してはネパール政府からの補助金に加え市予算からも治療費の補填を行うなど、市民の健康向上を手厚くサポートしていました。しかし、NGOの事業が終了した後も、行政の独自予算で活動を継続している地方自治体は、ネパール全土を見渡しても恐らくほとんどないでしょう。このような取り組みが高く評価され、ゴカルネシュワル市には2023年、全国功労賞(保健分野)が授与されました。
この事業が成功裡に終わったのは、ネパールのがん治療における第一人者でもある、AMDAネパール支部の医師たちをはじめ、様々な関係者の努力があったことは言うまでもありませんが、中でも、多岐にわたる活動をけん引し、そしてコミュニティから政策レベルに至る様々な関係者と確固たる信頼関係を築き上げることに成功した事業スタッフがいなければ、ここまでの成果をあげるのは困難だったのでは、と思います。
改めて、全ての事業関係者、及び事業を支援してくださった第一三共株式会社の皆さまに謝意を表するとともに、本事業が今も、行政の手によって続けられ、多くの女性たちが検診サービスをうけていることをご報告します。
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