贅沢なひととき ホンジュラス事務所 白川良美

2021/10/22

そろそろ10月も終わり。日本では店先の装飾が、ハロウィンからクリスマスへと変わり始める頃でしょうか。
 
ホンジュラスの10月は、日本の9月ごろの気温と、カラっと乾燥した冬の空気とをあわせたような陽気で、日本の蒸し暑い残暑に比べると、大げさではなく「ここは天国なんじゃないか?!」と思うほど過ごしやすい気候です。朝の通勤時にはさわやかな風を感じ、事務所では窓から差し込む木漏れ日で穏やかな暖かさに包まれ「実に贅沢なひとときだな~」と気持ちが和らぎます。
 
さて、しばらく日本に一時帰国していたこともあって久しぶりになりましたが、先日、妊産婦ケア改善支援事業を実施しているテウパセンティ市を訪れました。
 
事務所に到着後すぐ、現地スタッフのセレニアさんが「これ、見て見て~!」とはしゃぐ姿に、なんだろう?と思ったら、オレンジと黄色の風船と、かわいらしい装飾が施されたBien venido(ようこそ!)の手書きの文字が目の前に。ほんの一か月半ほど会えなかっただけの私に、子どもの誕生日会のようなアットホームで手作り感たっぷりのおもてなしで私を迎えてくれたことがうれしく、心がいっきに和みました。なんて贅沢なひととき。
 

ポップな装飾を準備してくれた現地スタッフのセレニアさん(写真右端)。もうすぐ1歳になる子どもとのお散歩が日々の楽しみ

同じ日のこと。妊産婦死亡対策委員会に参加し、市役所の関係者や保健所スタッフ、赤十字社の代表らと真剣な表情で話し合いをしていたところ、保健所のスタッフが私のことに気づくとすぐに、満面の笑みで「久しぶりだね~!また会えてうれしい!」と声をかけてくれました。あまりにも素敵な笑顔だったので、緊張感のあるテーマの会合にもかかわらず、思わず私の顔もほころびました。ちょっとしたことではありますが、なんて贅沢なひとときでしょう。

会合の様子。テウパセンティ市があるエル・パライソ県では、コロナ禍の影響で自宅出産した妊婦の死亡が増えていることから、同市にも「妊婦死亡対策委員会」が設置されています。

肌を通り抜ける気持ちのよい風、久しぶりの再会、ちょっとしたおもてなしとみんなの笑顔。「特別」より「日常」に近いそれを「贅沢なひととき」としみじみ感じるのはなぜなのでしょう。
 
それはきっと、1年半以上も続くコロナ禍で、時にはロックダウンの影響から長く家にこもらざるをえない状況が続き、リアルなface to faceの(直接顔を合わせる)交流に飢えていたからではないかと感じています。デジタル化が進んだおかげで、いつでも、どこからでも連絡がとれる時代になった一方、コロナ禍の影響で、リアルに、人の温かさを感じながらともに過ごす「日常」が「特別」になってしまいました。だからこそ、かつての「日常」の贅沢さを肌で実感できるようになったのだと思います。
 
現場にいるからこそ感じる人の温かさや、同じ時間、同じ空間をともに過ごせる日々は、なんとも言えない贅沢なひとときの連続です。
 

フィールドでの何気ないふれあいが仕事の原動力になります

これからも、現地スタッフや保健所スタッフ、住民のみなさんとともに、「贅沢なひととき」のすばらしさと感謝の気持ちを忘れることなく、実りある活動となるよう、しっかり取り組んでいきたいと思います。
 

白川良美(しらかわよしみ)
ホンジュラス事業 業務調整員

 
中学生の時にケビン・カーターの「ハゲワシと少女」の写真を見たことが、国際協力の道をめざすきっかけに。看護師として働いた後、青年海外協力隊員になり、南米パラグアイで生活習慣病予防対策等に携わる。その後、公衆衛生学修士を取得。開発コンサルティング企業勤務を経て、2019年AMDA-MINDS入職。趣味はバスケ、スノーボード、アクセサリー作り。岡山のおすすめスポットは、日本酒の利き酒ができる駅周辺の某店。千葉県出身。

 
 
 


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