ネパール駐在を終え、明日香村で思いを巡らす
海外事業運営本部 奥田鹿恵子

2021/12/21

NGOの駐在員として、そして個人としても初めて滞在する国となったネパールを離れることになりました。6年弱のカトマンズでの生活を引き払って帰国し、本部事務所での勤務を終えたところです。次の任地であるホンジュラスへの赴任まで、実家がある奈良県高市郡明日香村で過ごす予定です。
 

2015年の大地震で多くの家屋が被害を受けたダディン郡にて。住居再建研修を受講した地元の若者と筆者(右)

 
奈良県は20代の県外への流出率が全国で最も高いところだそうで、人口わずか5,500人の明日香村でさえも年少人口・生産年齢人口が減少傾向にあります。一方、石舞台や高松塚古墳をはじめとする豊富な歴史資産や自然に魅了され、明日香村へ移住して民宿や古民家カフェを開く人もいます。農業や保健医療、観光の分野においても、村が大学や企業と連携して環境整備や出張健診、名産品の開発を行うなど、さらに魅力的な村にしようと数々の取り組みが進められています。
 
飛鳥時代の史跡が数多く発掘されている明日香村のキャッチフレーズは「古代文化の香り豊かな郷」

 
ネパールの事業地も明日香村と同じような、いわゆる地方の農村部です。若者が国内の都市部や海外へ出ていく傾向は、日本以上に顕著でした。そんな中でも地元に残って、あるいは出稼ぎを辞めて自分たちの故郷で農業に勤しみ、大地震で被災した住居を再建し、住民の健康のために貢献する多くの人たちに事業を通じて出会う機会があり、変化を感じてきました。最近では「ホームステイ」と呼ばれる、主に外国人向けに農業・文化体験を組み込んだ民宿ビジネスを始める地域も増えてきています。
 
サグンさん(左)は12年間のカトマンズでの都市生活に別れを告げ、両親とともに150本のコーヒーの木を育てている。「コロナ禍が収束したら、アグロツーリズムを始めたいんだ」(ゴルカ郡にて)

 
ネパールに赴任した30代半ば頃までは、私は不便な田舎暮らしより、都市や近郊で便利な生活をする方が絶対に良いと思っていました。でも、ネパール農村部での事業に携わったこと、また5年ほど前には実家が明日香村に引っ越したことがきっかけとなり、田舎がとても好きになると同時に、地方創生への関心が高まりました。
 
水を手に入れるために川や池からパイプをつないだり井戸を掘ったり、牛が畑を耕し、肥料には家畜の糞や落ち葉といった地元で調達できるものを使い、薪で火を起こして料理し、い草で編んだ座布団に座ってお隣さんと軒先でおしゃべり。そんな光景が残るネパールの事業地で生活の術を学び、生きる力を実感しました。
 
薪で火を起こして料理する女性(ダディン郡にて)

 
明日香村では、以前住んでいた市街地に比べ、地域や人とのつながりを感じることが多いです。例えば、近所の人が畑で取れた野菜や果物をお裾分けしてくれます。近所を散歩していると、知らない人からも「こんにちは」と声をかけられます。民生委員による高齢者サポートに加え、村がスーパーマーケットへ移動するための車両を提供し、住民ボランティアが付き添いで高齢者の買い物をお手伝いしています。
ネパールの事業地とも共通する地域内の助け合いと人情味あふれる暮らしを保ちながら、開発途上国にも適用できるかもしれないと思わせる村づくりの新しい試みも行われています。医療や農業のデジタル化、外国人労働者の受け入れが明日香村でも現実となる日は、それほど遠くないかもしれません。
 
海外駐在生活の第一章が幕を閉じた今、私はこう思っています。開発途上国と日本の農村、双方の知見と技術を共有しながら、それぞれの地が存続し、前進するための活動にも関わっていきたい、と。
 
海外に目を向けるだけでなく、日本のことも学び続けつつ、得たヒントを開発途上国での事業運営に活かす。そして、その経験をまた日本に還元する。そんな好循環となるよう精進して参ります。今後とも応援くださいますようお願いします。
 

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この記事を書いたのは
奥田鹿恵子(おくだかえこ)
海外事業運営本部 プログラムコーディネーター


ブラジルやメキシコの子どもを支援する団体でボランティア・インターンをしたことが、国際協力の道をめざすきっかけに。民間企業での市場調査、NGOでの広報業務、青年海外協力隊(中米ドミニカ共和国でのコミュニティ開発)を経て、2015年にアムダマインズ入職。趣味はYouTubeで楽しむマーシャルさんとのダンス・エクササイズ、バドミントン、映画鑑賞。岡山で過ごすお気に入りの時間は、岡山城や後楽園脇を流れる旭川沿いの散歩。奈良県出身。

 
 
 

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