MINDS登山部 5,360メートルへの道のり 最終回 You have done it !
*過去の連載を読んでいない方はこちらからどうぞ*
①準備は入念に
②出発。ルクラからナムチェ・バザールへ
③富士山より高い場所
④氷河に沿って歩く。水と岩の世界
| 目指してきた頂きの麓にあるゴーキョ(4,790m)に到着したのは、まだ陽も高い午前11時ごろだったので、お昼ごはんを食べて、「軽く散歩しながら高度に身体を慣らそう」と言うシェルパ氏の言葉はいつもと何ら変わらないものでした。予定では、ゴーキョ・ピーク(5,360m)に挑むのは翌日の朝、エベレストの後ろから昇る朝日を見よう、というものだったので、私はたいした心づもりもせずにシェルパ氏の後について歩き始めました。
シェルパ氏が言うには、私はどうやら高度順応が早いのだそう。「多くの人は標高5,000m近くまで登ってきてすぐに食事なんてできないもんだよ」と笑われました。なるほど、確かに、ロッジの食堂で元気にダルバート(ネパールのカレー定食)を食べていたのは私だけでした。順応がうまくできるかどうかは、もともとの体質やどれだけ時間をかけて登るかなど、様々な要因に左右されるのだそうですが、私の場合、普段から1,300mのカトマンズで生活し、定期的にランニングを行っていたことで、高地に強い身体に自然となっていっていたのだと思います。「私の自己流高地トレーニングもあながちむだではなかったね」などと他愛のないおしゃべりをシェルパ氏としながらふと気がつくと、私はゴーキョ・ピークの斜面を登り始めていました。 前方に、鮮やかな旗がはためいているのが見えました。それは、天、風、火、水、地を表す5つの色からなる、チベット仏教の祈祷旗です。幾重にも重なるその旗は、そこが山の頂であることを示し、これまでにそこを訪れた数知れない人々が大自然と出会ってきた軌跡を表しているように感じました。一瞬、周囲の音が遮断されたような無音の感覚に包まれました。私には、それがあまりにも尊いものであるように見え、自分が先人たちと同じようにそこに立ってもよいのか少し躊躇しました。 ロッジに到着早々、お腹がすいたと言って晩ごはんを食べている私を見て、また笑っているシェルパ氏。これなら明日の朝も大丈夫だと確信したのか、「明日は朝4時前に出発するから。ゴーキョ・ピークの朝焼けはきれいなんよ」と、爺は相変わらずのんきに言うのでした。 ***終わり*** |
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