南部タライ地方の旅 ネパール事務所 奥田鹿恵子
「ネパールといえばエベレスト!高い山がたくさんあって、きっと寒いんだろうなぁ」というのが、ネパールに赴任する前、私が抱いていたイメージでした。実際にネパールに住んでみると、北と南であまりに地形が違うことにビックリ。北はヒマラヤ山脈、中央は緩やかな丘陵地帯、そしてインドと国境を接する南部のタライ地方には広大な平原が広がります。北海道の2倍程度の国土面積に、こんなにも異なる風景がギュッとつまっているなんて、なんとも面白い国です。
ネパールに赴任してからずっと、丘陵地帯で震災復興支援活動に従事していたのですが先日、プロジェクトのニーズ調査のためタライ地方のダン郡に行くチャンスがありました。ダン郡には少数民族のタルー族が多く暮らしていて、主に稲作や家畜飼育などで生計をたてています。他にも独自の文化をもつイスラム教徒やヤーダブ、ダリットといった少数民族/低カーストも多く居住しています。
タライ地域といえば、夏は気温40℃を超えることもあると聞いていたのですが、ラッキーなことに、調査時はそこまで気温は上がらずホッと一安心。とはいえ、丘陵地帯とは異なる民族や村の雰囲気など、新しい出会いに終始興奮気味の私の心は、常夏並みのあつさでした。
山はなく、一面見渡す限りの平野に広がる田圃で代掻きをする水牛の姿は、タライ地域の典型的な風景です。村の人が住む家の作りは、藁葺の屋根と土の壁。また、丘陵地帯のように山の水源から引かれたながーいパイプは見かけず、ハンドポンプや井戸から水をくむ姿は私にとって新鮮でした。鍋や調味料が1つ2つしかない台所の様子からは、村の人が質素に暮らす様子が伺えました。あるタルー族の男性の「村には職がなく、農業だけでは家族が食べていくことで精一杯」という言葉が切なく心に残っています。
ネパール国内では、地域間、民族・カースト間の経済・社会的格差が課題になっているのですが、ダン郡に暮らす人々もまた、厳しい生活を送っているようです。例えば、子どもの就学。親が子どもの就学の必要性を十分理解していないため(もしくは家庭の手伝いに必要という理由で)、学校に通わせてもらえない女の子が、特にイスラム教徒には少なくない様子でした。子どもの栄養面についても課題が少なくなく、例えば村で出会ったある男の子は身長90cm程度だったので、3歳くらいかなぁと思っていたら、6歳とのことで驚きました。
とはいえ、子どもたちの笑顔は万国共通!ダン郡でもはじける笑顔の子どもたちにたくさん出会えました。この調査を通じて明らかになった課題解決にむけ、来年には新しいプロジェクト始めたいと思っています。