うみがめ便り~うみがめ、ホンジュラスで協奏曲を聴く(後編)

2024/12/06

(前編はこちらから)
 
そもそも相手方行政(例えば保健省や地域の保健事務所)や住民、あるいは地域組織が持つ脆弱性ゆえに支援の妥当性や正当性が存在するのであるから、その部分(自主性や自立発展性)へのこだわりや不安が過度に大きいと「支援」事業そのものが成立しないという逆説的思考に陥ってしまう。
 
従って、この辺りのバランス、均整は極めて重要で、資金的、人的、物的なニーズとともに、介入(協力)手法や時間軸も加え、十分な検討を必要とする。

 
もう一つ重要な視点がある。それは十分な時間をかけて支援事業を運営できるかどうかにかかわらず、プロジェクトの成果は、それを統括するマネジャーやチームの力量に大きく左右されるという点である。

住民と話す現地スタッフ

彼(女)らには、支援の相手方(直接受益者)や最終受益者の(時に潜在的な)強みを掘り起こし、適切な能力向上支援を行い、多様な思惑を持った関係者間の利害調整に努め、成功への道筋をつけることが求められる。
 
これらを行い得るには、知見、経験、関係者によるサポートなどの要素に加え、コミュニケーション力、それに度胸や運などの要素も大きく影響する。大多数の関係者の損益がプラスに転じればプロジェクトの成功はほぼ確約され、それが逆転すると厳しいプロジェクト運営を強いられることになる。
 
妊産婦健診強化事業を例に取ると、最終受益者は妊娠に係るリスクを軽減でき、また命拾いする可能性も大きく、損得勘定をはるかに超える便益を得ることができる一方、検診時には一定の診療代を求められる。しかし、受診者が診療費を払い、病院や診療所がそれを適正に運用し、減価償却完了時まで超音波診断装置を適切に保守管理できれば、最終受益者数は倍々ゲームの如く増加する。
 
ただ、この仕組みをどれだけ理解し、納得し、幅広い関係者に共有してもらえるか、このあたりが事業運営の肝である。
家庭訪問を通じて妊婦の健康状態を確認する現地スタッフ

ホンジュラスにおける妊産婦健診強化事業は、手前味噌で恐縮だが、事業関係者が十分な情報共有を行い、適正な介入とともに、同じ方向へ同じテンポで歩みを進めたことにより、大きな成果を上げることができたと言える。
 
2つのロータリークラブの協力関係と、現地を知る当法人の協奏曲がホンジュラスの地において、妊産婦の応援歌を奏でることができた、そしてそれが今も共鳴し続けている。

 
 

 
 

この記事を書いたのは
鈴木 俊介(すずき しゅんすけ)
理事長


大学卒業後、民間企業に就職。その後国連ボランティアとしてカンボジアや南アフリカの業務に従事、様々なフィールド経験を通じて国際協力業界へのキャリアチェンジを決意。大学院で国際開発学を学び、ミャンマーにおける人間開発プロジェクトに従事した後、1999年、AMDAグループ入職。ベネズエラ、インドへの緊急救援チームを率いた他、ネパール、アンゴラ、インドネシアなどで様々な事業運営に携わる。2002年、AMDA海外事業本部長就任。2007年、AMDA社会開発機構設立。理事長就任。趣味は旅行、山羊肉料理の堪能。岡山のお気に入りスポットは表町商店街とオランダ通り。神奈川県出身。

 

 
 

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