国際家族デーに寄せて ホンジュラス事務所 浦上晶絵
5月15日は「国際家族デー」です。国連が定めた国際デーで、家族関連の問題に理解を深め、解決に向けた行動を促す日として知られています。とはいえ、ここホンジュラスで、「家族の日」はまだまだ一般には浸透していないのが現状です。
2日前の日曜日は「母の日」でした。日本やアメリカと同じで、5月の第2日曜日と制定されており、多くの家族がお母さんを囲み、日ごろの感謝を伝えて祝いました。贈り物には、バラの花を渡すのが一般的です。カーネーションを贈る日本の習慣とよく似ていますね。国際家族デーを知らなかったとしても、ホンジュラスでは「母の日」は「家族の日」と呼ぶのに相応しく、家族と過ごす中で自然と家族のことを想ったり、考えたりした人が多かったのではないかと思います。
ホンジュラスの山間部では、大家族が身を寄せ合って生活しています。都市と地方との格差は近年、広がる一方です。地方において、家族を取り巻く環境は、住まいから保健や教育、労働にいたるまで、都市部に比べ全ての機会が制限されていると言えます。中でも山間部の家族は特に厳しい生活を強いられていますが、彼ら自身、その厳しさに気づいてもいない場合が多いのです。
10人以上子どもがいる家庭も珍しくなく、家族の中に妊婦や赤ちゃん、小さな子どもたちが、常に存在する毎日を送っています。日本は、自分の子どもが生まれるまで赤ちゃんを抱いたことがないという人も多くなってきていると聞きますから、日本人にとっては逆に、少し羨ましい状況なのかも知れません。笑い声や泣き声の絶えない、賑やかな家族はとても微笑ましいものですが、貧困状態にあるお母さんたちにとって、度重なる妊娠・出産と子育ては、心身ともに疲弊する要因にもなっています。また、物心がつく前から小さなお母さんとして弟たちの世話をし、自分の勉強をするのもままならず、やがて我が子を産む少女たちにとっては、断ちがたい負の連鎖にもなっています。
私たちは、このような環境下にある山間部の家族の母子保健向上や健康増進に関わる事業を、長年にわたって実施してきました。働きかけを行う対象の最小単位は「家族」です。その家族の中心にいる妊婦やお母さん、赤ちゃんや子どもたちが、健康的な生活を安心して送れるように、家族の協力はもちろんのこと、一つ一つの家族が手を取り合い、村全体で、妊娠から出産を見守る体制を作ることにも取り組んでいます。また、思春期層へのリプロダクティブヘルスを推進し、若年妊娠を予防するため、学校や村を対象とした研修や啓発活動を実施しています。
最後に、「家族の日」に思い起こしたい言葉を紹介します。マザーテレサが、ノーベル平和賞を受賞した際に、インタビューの中で答えていたフレーズです。
What can you do to promote world peace? 世界平和のためにできることは何でしょう?
Go home and love your family. 家に帰って家族を愛して下さい。
世界平和と国際協力。日夜携わる身でありながら、ともすると本当に実現可能なのかという無力感にとらわれてしまう日もあります。そんなときこの言葉は、まずは家族を、そして周りで支えてくれる人を大切にすることから、という原点に立ち戻らせてくれます。