国際青少年デー(8/12)に寄せて ホンジュラス事務所 浦上晶絵
国連が8月12日を国際青少年デーとして定め、第1回を迎えたのは2000年のこと。その年に、生を受けた赤ん坊は、世界に1億3,170万人、日本では120万人(2002年世界子供白書-国連人口局)。ミレニアムベビーという言葉も登場し、2000年生まれの赤ちゃんが話題になりました。
2000年生まれは、今や18歳に成長し、青少年期の真っただ中を生きています。日本では、大学受験のため、夏休みも一日中勉強している高校3年生も多いことでしょう。あるいは、就職準備のため実習に通ったり、アルバイトに励む生徒もいるでしょう。それぞれが将来の夢を抱き、自分の意思で将来の選択をし、自立への一歩を踏み出そうという大きな分岐点に立っています。
一方で、世界に目を向けてみると、同じく2000年に産声をあげた赤ちゃんが青年期へと成長していますが、すでに新たな命を産み出している少女がたくさん含まれるということは、見逃せません。当たり前のように母親・父親となり、子どもを1人、場合によっては2人、3人と育てている青少年もいます。ホンジュラスでも山村部に行くほど、こうした状況が見られます。産前健診のために保健所を訪れる妊婦の生年が2000年代であることは、ごく普通のことになってきました。
ある青少年は、十分な教育を受け、健康な身体をもち、自身の能力を開花させるべく無限の可能性に胸を躍らせているかも知れません。しかし、ある青少年は読み書きもままならず、ある少女は自身のお腹も十分に満たすことが出来ないのに、我が子に乳房を含ませながら途方に暮れているかも知れないのです。若年妊娠の予防は、ホンジュラス政府も国の最重要課題の一つとし、改善に乗り出しているものの、思春期層がリプロダクティブ・ヘルスに関する情報を得る機会は、実際には限られています。
AMDA-MINDSのホンジュラス事業では、若年妊娠の減少に貢献するため、思春期リプロダクティブ・ヘルス推進事業を実施しています。
思春期層・保護者・学校教師・保健所スタッフ・保健ボランティアへの研修を実施し、思春期クリニックやピアルームと呼ばれる専用カウンセリングルームの設置によって、すべての世代の人がリプロダクティブ・ヘルスのサービスに同等にアクセスできるよう整備しています。
思春期層への性教育はこれまで、既に妊娠している10代への保健教育、または出産を終えた10代の少女への家族計画の場を利用して行われることがほとんどでした。しかし、妊娠後になって初めて、若年妊娠・出産による健康被害や妊産婦死亡率の高さ、学業の中断がもたらすその後の就業活動への深刻な影響などの知識を得て、後悔する思春期層の少女が後を絶ちません。そのような中、事業で育成された中学生・高校生のピアリーダーたちによる学校内外における活動は、ピア効果(仲間や同僚がお互いの行動に影響を与え合うこと)を発揮しています。保健ボランティアや保健所スタッフの協力を得て、若年妊娠のリスクがより高い、学校に通っていない思春期層への働きかけや、ラジオやケーブルテレビなどの公共放送を活用することで、1人でも多くの青少年、思春期層に情報が届くように取り組んでいます。
国際青少年デーがスタートした年、2000年生まれの青少年たちは、それぞれがおかれた境遇の中で試行錯誤、切磋琢磨しながら青少年期を過ごしています。8月12日は、思春期層を対象とした事業に関わりながら、より注意深く彼らの声に耳を傾けようと決意を新たにする日でもあります。