マイクロファイナンスに経営情報システムを導入しました ミャンマー事務所 江橋裕人
ミャンマーのメティラ郡で長年にわたって取り組んでいるマイクロファイナンス(MF)を活用した生計向上事業に、Management Information System (MIS=経営情報システム *1)を試験的に導入して約1年が経ちました。おかげで事業の効率化が進み、総じてプラスの影響がもたらされています。
以前は全て手作業と表計算ソフトのエクセルで管理をしていました。特に大きな問題は生じていなかったものの、業務規模の拡大にともない、改善の必要があると考え始めていた折、ミャンマーに現地事務所を構えるリンクルージョン株式会社(同社のサイトへ移動します)から、MISについてのお話を聞く機会を得ました。事業の効率化だけでなく、MFによる効果を社会的パフォーマンスとして把握し、管理・運営強化を図れること(SPM: Social Performance Management *2)に魅力を感じ、費用対効果をよく検討した上で導入を決定。2017年8月からデータの移行と試行錯誤を重ね、同年10月に本格的な導入となりました。
AMDA-MINDSのメティラ事務所には所長、副所長、総務会計士の他、村々を回るローンオフィサーが6人、事務所警備員2人が勤務しています。MIS導入によって、業務負担が特に軽減されたのは、ローンオフィサーの6人です。マニュアルの作業が減り、最新のデータを印刷できるようになったことで手計算によるミスが減少。その分、余った時間を他の業務に振り向けることが可能になりました。さらに、データがクラウド上で一元管理されることで、岡山本部、ヤンゴン統括事務所など、どこからでもインターネットを介してデータへアクセスすることが可能となりました。
とはいえ、現状は良いことばかりでもありません。クラウド上のシステムを使って必要書類を印刷するということは、当然ながらインターネットやプリンターが必須となります。ミャンマー、特に地方における電力の供給体制は依然、脆弱です。電気無しにはコンピューターもプリンターも使えません。スマートフォンの急速な普及と共にインターネット利用者も急増していますが、ヤンゴンでは5年ほど前からある一般家庭用の光ファイバーサービスは、メティラでは今年からようやく始まったところです。さっそく事務所に導入しましたが、まだまだ完璧な状況からはほど遠く、週に何回か不通になるのが現状です。MIS導入前は、自分たちで使いやすいように書類を手作業で作成していました。しかし、MISは他のマイクロファイナンス機関でも利用される汎用性の高いものであり、私たちが希望する書式すべてに対応することができず、頻繁な微調整が必要です。
いま期待して待っているのは、オフラインアプリの開発です。これが導入されると、ローンオフィサーが村でタブレット端末を用いて返済額などのデータを入力し、インターネット環境のある事務所に戻るとそのデータが自動的にシステムに送られる(同期される)ようになります。現在は、事務所に戻ってから行っている入力作業が無くなり、更なる効率化が望めます。
今後もMISを積極的に活用し、社会的パフォーマンス管理・運営の強化や事業の効率化を図りつつ、受益者である村人一人ひとりに適切なサービスを提供していきたいと思います。
*1:AMDA-MINDSが導入したMISとは
システム開発者は株式会社日本ブレーン及びリンクルージョン株式会社。顧客情報やローンの状況(貸付額、返済状況など)がウェブ上でクラウド管理される。
*2:社会的パフォーマンス管理・運営とは
「より多くの貧困層に適切な金融サービス提供することにより貧困削減に貢献する」という社会的目標の達成と、金融機関としての財務持続性の維持を目指すための考え(JICA事業におけるUniversal Standards for Social Performance Management(USSPM)活用マニュアル、2015年3月より)