木下家ネパール珍道中!番外編「父ちゃんはつらいよ…」ネパール事業統括 木下智

2013/03/08

Namaste(ネパール語で「こんにちは」)!日本では春に向けて、暖かくなってきた頃でしょうが、皆さま、いかがお過ごしでしょうか?

さて、国民的映画「男はつらいよ」シリーズでは、マドンナから身を引く寅さんの姿をみて辛く悲しい思いがしますよね。私は前回の一時帰国の際、4歳になるやんちゃ坊主に「留守中はかあちゃんの言うことをしっかり聞かなあかんでぇ」と言い残し、後ろ髪をひかれる思いでネパールに戻ってきました。
前回まで、こちらでの家族との生活をずいぶん強調していため、「あれ、今回はネパールでの家族との生活の話ではないの?」と思われる方がいらっしゃるのではと思います。お伝えするのが遅くなってしまいましたが、昨年2月に妻と息子は日本に帰国しました。
とはいえ、「奮闘記」は続きます。今回はネパールでの子育てを紹介したいと思います。

ネパール流子育てを一言で表すと、多くの大人が子どもにものすごく寛容で、子どもに「自由」が与えられているといえるのではないでしょうか。
例えば、日本でも小さな子どもは何にでも興味を示し感触を確かめるために、携帯などの電子機器も含めて触りたがります。ネパールのほとんどの親は、子どもが携帯を触ったり落としたりしても、携帯で遊んでいる子どもを止めたり怒ったりすることはありません。こちらの人にとって中には月給1か月分もする携帯は決して安価なものではありませんので、子どもたちが無邪気に携帯で遊んでいる姿をみると私が気になって仕方がありません。一度、知人にこのことを聞いてみると、「子どもは何かを触って学ぶものだからいいんじゃない?もちろん潰れたらショックだけど、ちゃんと見てなかった私も悪いから」という返答でした。

また、家族と地元レストランで食事に行った際には、店員さんが息子の世話をよくしてくれ妻と私はいつも助かりました。子どもはなかなかじっとしているのが苦手ですよね。食事が終わり椅子に座っているのが苦痛になり、何か面白いものがないか店内を徘徊しはじめます。家族でネパールに赴任当初は、他のお客さんに迷惑をかけてはいけないと思い、どこかに行った息子を連れ戻し妻も私も気になっていました。しかし、ネパールに行ったほとんどのレストランで働く店員さんたちは何ひとつ嫌な顔をせずに息子の相手をしてくれていました。息子がキッチンやバーカウンターの中を覗くと店員さんが色鮮やかなマドラーなど子どもが喜びそうなものをくれたり、息子を抱っこし外の風景を見せてくれていました。はじめは外国人だからこれだけのもてなしをしてくれているのかと思っていましたが、ネパール人の子どもたちにも平等に相手をしていることがわかりました。

レストランの店主に抱っこしてもらい外の風景を見せてもらう息子
レストランの店主に抱っこしてもらい外の風景を見せてもらう息子

大好きなおじさんに蹴りを教えてもらう息子
大好きなおじさんに蹴りを教えてもらう息子

ある日、息子がネパールで一番仲の良かった小学2年生の女の子に怪我をさせたことがありました。その女の子が穴に落ちたボールを取る際に、息子が何かの拍子に後ろから押して、その女の子は穴に顔から落ちてしまいました。そして、穴のヘリで鼻の頭を打ち擦り傷ができてしまいました。怪我の話を聞いた妻は、「うちの息子が、女の子、ましてや顔に怪我をさせた。ああ、大変だ!どうしよう…」と気が気ではなく、早速女の子のご両親に謝りにいきました。すると、お母さんは「子どもは悪くて当然!みんな一緒やから気にしないで。」と。妻はこの言葉に救われ、今でも大変印象に残っていると言っています。

余談ですが、後日、近所の人たちが店先で井戸端会議をしている時に、その女の子の鼻の怪我を見て、「どうしたの?」と尋ねていました。女の子が経緯を説明すると、近所の人たちは近くにいた子どもたちに「その穴に絶対に近づくなよ。K(息子の名前)にまた背中を押されるぞ。」と冗談半分にいうと、集まった人たちは大爆笑!?でした。そして、挙句の果てにはある人は「K、でかした!」と息子をたたえていました。これぐらいのことは、大半のネパール人にとっては些細なことなんでしょうかねぇ。

ベランダでシャワーを浴びすっきりした息子と友人
ベランダでシャワーを浴びすっきりした息子と友人

写真に群がる元気いっぱいの子どもたち
写真に群がる元気いっぱいの子どもたち

1年弱と短い間でしたが、このような中でネパール人の子どもたちと一緒に育ったKは幸運だったのかもしれません。時には友達の女の子に顔面をパンチされ「ママァ~」と泣いていたこともありましたが、たくさんの大人にかまってもらったり、近所の子達と一緒に外でシャワーを浴びたり、夕方暗くなった後も家の前で走り回ったりとたくましく育ってくれたと思います。
ただ、子どもに対し寛容といっても、子どもが大人の言うことを聞かないと「バシィ」と子どもの背中をたたく大きな音と子どもの泣き声が…。日本ではここ最近あまり聞かなくなりましたが、しつけもしっかりとしているようですね…。

最後に、皆さんにご報告です!
前回の「奮闘記」執筆後、日本からのお客様をまだかまだかと心待ちにしていましたが、昨年8月には高知より医学生、看護学生の5名の方にブトワルを訪問いただきました。ブトワルの街中を散策する学生さんたちの周りを、物珍しそうにやんちゃな子どもたちが寄ってきて、あっという間に彼らは囲まれていました。
これを読んで下さっている皆さんも、たくましい子どもたちとの交流をしに、或いは淋しい毎日を過ごす父ちゃんを癒すために(?)、ネパールへの旅はいかがでしょうか?

いつでもお待ちしております!