村の未来のための新たなステップ ネパール事務所 クンダン・ラマ・タマン
ナマステ!(ネパール語で「こんにちは」) クンダン・ラマ・タマンです。AMDA-MINDSネパール事業のパートナー団体SAGUN(サグン)でプロジェクト・コーディネーターをしています。
2018年7月から実施してきた「アグロフォレストリー推進事業」が終了しました。一年間の短いプロジェクトでしたが、村人の希望が実現し、未来への基盤をつくることができたので、とてもやりがいを持って活動に取り組むことができました。
事業地のロシ地区ではここ数年、山林伐採が進んで車の通れる道が開通し、採石業が盛んになったことで、土壌流出や水源の枯渇といった問題が深刻化し、持続可能な農村生活が脅かされてきました。先日も大雨で土砂崩れが発生し、家に土砂が流れ込むなど、大きな被害が出ました。「山や森を守りながら農業で地域を発展させたい!」という村人の想いから始まったのが、このプロジェクトです。
活動の柱の一つが果樹の植栽です。村には昔から、果物の木がいくらか生えていましたが、誰もケアをしておらず、ただ単に「そこに生えている自然の木」として放置されており、実がなれば食べるし、実がならなくなったらそれでおしまいでした。
この事業では、レモン、オレンジ、アボカド、コーヒー等の苗木を約2,000本植えましたが、この植栽を通じて、村の人たちも大切なことに気づくことができました。それは例えば、「実った果実を売れば収入を得られる」という非常にシンプルで当たり前のことだったり、果実にはビタミンなどの栄養素が含まれていて健康に良いということだったり…。果樹栽培は初めての農家にとって、まだ試行錯誤が続いていますが、数年後には実をつけ、確実に販売へつなげることができるよう、これからもサポートを続けていきます。
そして、もう一つの活動が環境教育です。日本の中・高校生にあたる学年の生徒を対象に開催したワークショップでは、山林伐採で緑が少なくなった村についてのビデオを見たり、カードゲームを通じて自然破壊の因果関係について学んだり、緑を守ることで村にどんな利点があるのかを考えたりしました。従来の授業にはないテーマだったので、生徒だけでなく教師にとっても新しい学びが少なくなかったようです。2日間にわたるワークショップ後、生徒たちは「木を植えることで地すべりや土砂崩れの予防につながるんだ」「木は二酸化炭素を吸収し、酸素を送って、空気をキレイにするんだ」、「自然の豊かな森は雨を降らせてくれるんだ」、などと学んだことを自慢げに教えてくれました。
AMDA-MINDSとともに、この地域で活動を始めて6年目になります。これまで力を入れてきた野菜耕作については、肥料づくりから栽培まで、農家の技術はみるみる上達しており、多くの農家が新たに農業収入を得られるようになりました。そしてこの事業をきっかけに、果樹栽培という次のステージに立つことができました。この事業に参加した農家が果樹栽培でも成功すれば、他の農家にも広がることでしょう。その結果、緑も生活も豊かになった村のことを思い描きつつ、ますます精を入れて活動を続けていきます!