人間も自然も、ともに豊かな未来を目指して
海外事業運営本部 林裕美
今回の活動レポートでお伝えするのは、「緑の募金」(同公式サイトに移動します)を活用してホンジュラスで取り組んでいる、アグロフォレストリー事業の最新情報です。
「緑の募金」と聞いただけではピンとこない方でも、コンビニなどの店舗においてある募金箱や、協賛商品に表示されているロゴを目にされたことがあるかもしれません。昭和25年に始まった「緑の羽根運動」をルーツとする「緑の募金」は、国内外での森づくり・人づくりの活動に活用されていて、今回ご紹介するホンジュラスでの取り組みも、その一つです。
活動地は首都テグシガルパから車で2~4時間ほどの山間部で、住民の多くはわずかな土地で自給自足的な農業を行いながら暮らしています。雨の少ない乾燥地域のため、作物の生産量は元々多くありませんでしたが、特に牛を保有している農家が、少しでも牧草の生産性を高めようと焼畑で面積を広げた結果、土地が痩せてさらに生産量が減り、ますます食料が不足する…という悪循環に陥っていました。
このような状況の中、アムダマインズは2017年に家庭菜園の普及を通じた栄養改善・生計向上事業を開始し、土地に合った土壌の作り方、栽培する作物の選び方・育て方や、有機肥料の作り方などの技術指導に取り組んできました。
ところが、近年は降雨量がさらに少なくなり、気温も上がり、多くの住民は気候変動の影響を肌で感じるようになってきていました。「少なくなってしまった森を取り戻したい」という訴えは、事業開始当初から耳にしてきました。
このような農民自身の気持ちを実際の行動に移せるよう、森林と調和した農業、すなわちアグロフォレストリーの実現を目指して開始したのが今回ご紹介している事業なのです。植樹、苗床の設置および水源の保全に取り組むこの事業を開始できたことを心から嬉しく思っています。
植樹は2021年10月から各地で進められ、アボガド、マンゴー、カシュー、ナラ、アカシアなどの苗木が植えられています。山間部のこの地域では、植樹をするのも傾斜地になります。作業当日は近隣の農民が集まり、慣れた足取りで傾斜地を歩きながら、1本1本の苗木を大切そうに植えていました。
また、将来にわたって自らの手で必要な植樹ができるよう、各地域で苗床の設置に取り組んでいます。学んだ知識を活かして苗床となる土を自分たちで作り、ポットに詰めていきます。並べられたたくさんのポットが、小さな子どもたちのために愛情を込めて整えられたベッドのように見えたのは、私だけでしょうか。
さらにこの事業では、植樹だけでなく水源を守る取り組みも進めています。この地域では水は大変貴重なものです。生活にはもちろん、持続可能な農業のためにも、水源を守ることが必要不可欠であると改めて認識した農民は、水源を汚さないよう周囲を清掃したり、水源を守るための植樹をしたりしています。
環境と調和した持続可能な農業と生活の実現を目指すホンジュラスの農民たち。この活動に取り組んでいる人々からはさまざまな喜びの声が聞かれます。
例えば、子育て世代のロペスさんは、この活動のことを「次世代への贈り物」と表現しています。
また、プロジェクトのスタッフとして、この地域を担当しているフェルナンデスさんは、自身がもつ技術で地域に貢献できたことを誇りに感じています。
今日も彼らは水源をきれいに保ち、苗木の世話をしながら、自然とともにある豊かな未来に想いをはせています。
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