いまできることを着実に
海外事業運営本部 白幡利雄

2023/02/27

「ミャンマーのことも忘れないで!」

これは、ミャンマーへの支援にかかわる方々から、最近よく聞かれる言葉です。2020年の春に始まったコロナ禍に加え、翌年2月の政変と非常事態宣言発令(現在も継続中)の大きな影響を受け、ミャンマー国民はいまも筆舌に尽くしがたい困難の渦中にいます。1年前に始まったロシアによるウクライナへの軍事進攻以後、メディアに取り上げられることが減ってしまったミャンマーですが、人々は希望を捨てず、必死に「いつもの毎日」を送り続けています。
アムダマインズは、前身のアムダ海外事業本部時代を含め、これまで30年近く、ミャンマーでの活動を継続してきました。今回はその中で、16年にわたって自身と家族の生活を向上させようと努力してきたある女性のいまを、ご紹介します。
 
ヌ・チーさん、51歳。住まいのあるメティラ郡シン・ミョー村は、農業にはあまり向かない不安定な気候の中央乾燥地にあり、就業機会の限られた貧困度の高い地域といえます。彼女がアムダマインズの生計向上プログラムに参加したのは、2007年のこと。当時、夫と2人の娘、そして1人の息子と暮らしていたヌ・チーさんは、子どもたちを学校に通わせることができない貧しい暮らしから抜け出すために、何か自分でできる仕事を始めたいと考えていました。
プログラムは、少額の融資を無担保で提供するマイクロファイナンスを活用するものです。最初の融資を受けた彼女は、市場で野菜の卸売りを始めることにしました。毎年少しずつ規模と利益を拡大して貯蓄を増やしていき、8年後には、ついに自宅でお店を開くことに成功したのです。
 

市場で野菜の卸売りをしていた頃のヌ・チーさん(左)

 
その後、さらに2人の娘を授かったヌ・チーさん。いまでは、長女と一緒にお店を切り盛りし、2人の子どもを学校へ通わせることができました。また、息子は僧侶となり、夫は、なかなか安定した収入を得られなかった大工の仕事をやめ、いまは農業と畜産業を営んでいます。一つひとつのことにかなりの資金が必要でしたが、すべて生計向上プログラムをきっかけに得られた収益でまかなうことができました。
 
自分のお店で長女(左)と一緒に

 
「私たち家族の生活を変えてくれたアムダマインズの活動に、そして、日本でそれを支えてくださっている支援者の皆さんに、本当に感謝しています」と話すヌ・チーさんのいきいきとした笑顔からは、いまのミャンマーのおかれている厳しい社会状況はとても想像できません。でも、彼女とともに活動してきた仲間の中には、再び以前の苦しい生活に戻ってしまった人がいることも事実です。
 
どんな逆境に飲み込まれようとも、全てを受け入れ、そして希望を抱き前を向くヌ・チーさんのような村人たちとともに、アムダマインズも「いまできること」を着実に積み重ねていきたいと思います。
 
自慢のお店で馴染みのお客さんと
「コロナ禍で苦しかった時もあるけれど、お店の経営は順調です」

 

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ミャンマースタッフのブログ >>> こちらから

 

この記事を書いたのは
白幡利雄(しらはたとしお)
海外事業運営本部長


学生時代に手話を学んだこと、NGOの存在を知ったことをきっかけに、世界をより良く変えることを一生の仕事にしたいと決意。教育学修士号取得後、日本の国際協力NGOに就職。約21年間、東京事務所で海外事業全体のコーディネーションを担当した他、バングラデシュとネパールに事務所長として駐在。2014年にアムダマインズ入職。2020年から現職。趣味は読書と映画鑑賞。岡山のお気に入りスポットは西川緑道公園。東京都出身。

 

 
 

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