小さな苗に未来への願いを込めて~コーヒー栽培を通じた所得向上支援事業~
ネパール事務所 小林麻衣子

2023/01/26

2023年1月、ネパール・ゴルカ郡の事業地に、5か所目となる「パルピングセンター」が設置されました。パルピングとは、コーヒーチェリー(実)の赤い果肉を除去し、中に入っているコーヒーの「種子」を取り出す精選作業のことを言います(ちなみにこの種子をさらに加工してやっと「コーヒー豆」になります)。この作業が都市部の加工業者に頼らず、村の中でできるようになると、それだけでコーヒー栽培農家の売上げが倍以上に増えることが見込まれます。
 

パルピングセンターに設置された電動果肉除去機(中央にある銀色の機械)の利用方法を指導する専門家(中央、半そでシャツの男性)。公益財団法人ウェスレー財団からのご支援により、購入したものです。

 
アムダマインズは、2021年からゴルカ郡の2つの行政地区で、付加価値の高い換金作物のひとつであるコーヒーの栽培を推進し、その収穫物の販売を通じて零細農家の生計を向上する活動に取り組んでいます。
 
ここでは以前から、複数の農家がコーヒー栽培をしていましたが、ちまたのコーヒーブームとは裏腹に、農家からは「手間暇かけてもちっとも稼げやしない」との声。それもそのはず、「コーヒー豆」はその状態によって取引価格が大きく異なり、木から収穫したコーヒーチェリーを乾燥させただけのものと、パルピングをした「パーチメント」の状態のものとでは、キロあたりの取引価格に4倍もの差があるのです。パルピングセンターがなく、その技術も知らなかった農家は、乾燥チェリーを安く買いたたかれていたというわけでした。
 
そこで、私たちはまず、コーヒー栽培が収入向上につながる仕組み、つまり、高い価格で取引される「パーチメント」の状態に精選する必要があること、栽培過程でその品質が左右されること、などを農家に説明しました。そして、意欲のある新規就農希望者と、既存の農家に苗を配布して栽培指導を行うと同時に、既に収穫できる木を持っていた既存農家に対しては、パルピング技術の指導とパルピングセンターの設置を、あわせて支援しています。
 
日蓮宗あんのん基金や、第一学院高等学校(岡山キャンパス)からのご支援で購入したコーヒーの苗木を、コーヒー栽培新規就農希望者に無償で提供し、指導員が苗木の育成状況をモニタリングすることで、スタートアップを支援しています。

 
これまでに5つのパルピングセンターが設置され、各センターを拠点とする生産者グループが組織されました。毎週決められた曜日に、収獲したコーヒーチェリーをパルピングセンターへ持ち込むと、センター管理者がすべての農家のチェリーを精選加工する(全体の売上げから作業費が支払われます)、というルールや役割分担を取り決め、グループとしての作業効率化にも取り組んでいます。
 
パルピングセンターの様子。初めての試みに関係者の期待も高まります。

 
12月から始まったコーヒーチェリーの収穫期が最盛期を迎える今、「今年、この地域でとれる豆はすべてパーチメントで出荷する」という目標を掲げ、5か所のパルピングセンターは、どれも忙しく稼働しています。
 
コーヒーの小さな苗が、この地域に暮らす人々の未来への希望となることを願い、今日も活動に精を出しています。
 
毎年11月~2月頃の快晴の日には、ヒマラヤ山脈に属する標高8千メートル峰のひとつ、マナスルを村から見ることができます。

 
 

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この記事を書いたのは
小林麻衣子(こばやしまいこ)
ネパール事務所 事業統括


外国語の学習が好きで、大学ではヒンディ語を専攻。バックパックを背負って毎年インドを訪れる。大学院を休学して長期滞在したインド・ビハール州の農村で、村の人たちと生活を共にしたことが「地域開発」に興味を持つきっかけに。国際学修士を取得後、青年海外協力隊員としてスリランカで活動。2008年にアムダマインズ入職後は一貫してネパール事業に携わる。最近のストレス発散方法は、学生時代に見たインド映画のダンスシーンを娘と一緒に再現すること。娘のお気に入りは「Mission Kashmir(アルターフ 復讐の名のもとに)」のBumbroダンス。岡山県出身。

 
 

 
 

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