ミャンマー貧困地域の母子の健康を守るために
ミャンマー事務所 南條 昌康

2024/05/21

少数民族が多く住むミャンマーの山岳部では、貧困や医療水準の低さが依然として深刻な問題です。この様な遠隔地では、医療サービスへのアクセスが困難なため、多くの住民が適切な医療を受けられずに苦しんでおり、特に妊娠や出産に伴う死亡率が高い状況にあります。
 
ある村では、妊娠中の女性が足を滑らせて転んだことで出血してしまい、病院で治療をうけることもなく亡くなってしまったという事件がありました。もし妊婦が搬送され、適切な医療サービスを受けることができていたら、違う結果になっていたかもしれません。
 
私たちアムダマインズは、2022年3月から、ミャンマー北部のシャン州で「マイエー郡の山岳地帯における母子保健改善事業」を実施しています。この事業では、対象地域の妊娠や出産に関する状況の改善を目指し、衛生や栄養の改善など、多角的なアプローチを通じて、母子の健康を守る仕組みづくりに取り組んでいます。
 

対象地の様子。パラウン、シャンなどの少数民族が、人口のほとんどを占める

 
住民に対して、妊娠や出産に関する保健知識の研修を提供することも、活動の一つです。それらの知識を住民に理解してもらうことで、日々の行動の改善につながります。
 
母子保健についての知識は、住民にとって初めて知る内容であることも多いので、スタッフは何度も繰り返し丁寧に説明をする努力をしています。特に少数民族は独自の言語を使うため、ミャンマー語を理解できない住民が多くいます。そのため、スタッフはなるべく言葉に頼らなくても理解が進む様に、絵や写真などを活用した教材を使って、わかりやすく説明しています。
 
内容が見てわかる教材を使って研修を行うスタッフのチャン・ルー

 
保健研修は、住民の要望に応じて、夜に開催されることも少なくありません。特に収穫期はみんな畑仕事が忙しく、日中の研修には参加できません。なるべく多くの住民に参加してほしいという想いから、スタッフが村に宿泊して研修を実施することもあります。
 
保健研修は夜に開催することもある

 
また、5歳未満の子どもたちに対して、成長モニタリングという活動を行っています。小児の身長や体重を測定し、成長の状況を記録します。この活動によって、子どもたちの栄養や健康の状況を確認することができ、適切な支援を提供することができます。
 
成長モニタリングで子どもの発育状況を確認している

 
このような活動で大切なのは、住民がみずから母子の健康を守る行動をとれる様にしていくことです。そのため、各村から住民のボランティアを募り、必要な研修を実施しています。ボランティアは、研修を通じて得た知識を住民の立場にたって伝えることができるので、とても重要な役割を果たします。保健の知識を持ったボランティアを多く育てることで、彼らが今後、村人に伝え続ける体制を整えることを目指しています。
 
研修を受けたボランティアが知識を住民に共有する

 
また、母子の健康を守るためには、妊婦や子どもの状況だけがよくなればいいということはありません。その家族や住民、コミュニティ全体の理解と協力が必要です。そのために、関係者の連携を強化するミーティングを実施し、地域を担当する行政の保健スタッフと住民のボランティア・リーダーがコミュニケーションをとれる場を提供する活動もしています。
 
この事業を始めてから2年が経ちました。これまでの活動により、地域の母子保健状況の改善に向け、成果が少しずつ現れてきています。これからも引き続き、ミャンマー貧困地域に暮らす母子の健康を守るための活動に取り組んでいきます。
 
 

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スタッフブログ「ミャンマーの人々の力を信じて

 

この記事を書いたのは
南條 昌康(なんじょう まさやす)
ミャンマー事務所 事業統括


アメリカ留学を経て、日本財団の姉妹財団である東京財団に入所。その後、民間企業、国会議員秘書などを経て、ミャンマーへ渡航。現地企業で約5年間、主にミャンマーに進出する日系企業のサポート業務に従事。2023年2月より現職。ミャンマー語をもっと勉強しなくてはいけないというプレッシャーから逃げるかのように、好きな映画の動画配信で余暇を過ごす日々。静岡市出身。

 

 

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