ネパールで取り組む「稼ぐための農業」

2024/07/31

「農業で食べていけるなら、家族と一緒に村で暮らしたい」
 
これから海外へ出稼ぎに行くことになっている青年が、ぽつりと漏らした言葉です。
 
今回ご紹介する新しい事業「青年リーダーたちと取り組む『稼ぐための農業』推進プロジェクト」(JICA草の根技術協力事業)は、青年の希望をなんとか実現したい、との思いから始まりました。
 
人口の6割以上が農業に従事しているにもかかわらず、GDPに占める割合は3割程度と、農業が国の産業として育っていないネパールでは、丘陵地集落からの人口流出が深刻です。この青年が住むゴルカ郡も丘陵地に位置しており、全世帯の半数以上において家族の誰かが国内外へ出稼ぎに行ってしまっている状況です。
 

ゴルカ郡の事業対象集落の様子。標高600mから1,500mの丘陵地に集落が点在している

 
出稼ぎに出なければならない理由、それは「農業だけでは食べていけないから」です。事業地では、住民の9割以上が農業を主な生計手段としながらも、年間を通じて自給的農業だけで食べていける世帯は3割にとどまっています。
 
この新事業では、野菜とコーヒーの栽培と販売を通じ、零細農家の所得向上を目指します。丘陵地にある対象地域では、機械化を通じた大規模な営農は望めない一方、地勢や気候条件を活かしながら野菜や果物、コーヒーなどの換金作物を複数組み合わせることによって現金収入の創出が見込めることに着目したものです。
 
コーヒーの苗木が村に到着!今春から新たに278世帯がコーヒー栽培に挑戦しています

 
具体的には、①農業セクターにおける青年リーダーの育成と関係者間の連携構築、②栽培技術の向上と生産体制の安定化、③市場とのつながりを考慮した収益性の高い販売体制の確立、を柱としており、900世帯の農家と共に、これらの活動を進めています。
 
長い道のりかもしれませんが、誰かが出稼ぎに行かなくても、家族全員が農業で食べていけるようになる日が来るよう、取り組んでいきたいと思います。
 
「そりゃあ、暮らせるなら一緒に暮らしたいさ。あたしらは先行き長くないんだしさ」と笑いながら語ってくれた女性。子や孫の戻りを、首を長くして待ちわびている。

 
 

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