母子のいのちだけでなく、その後も続く人生を守るために
母子保健専門家 樋口可苗
日本最南端の島、波照間島からホンジュラスの首都テグシガルパへ。首都よりさらに南へ車で約3時間。フランシスコ・モラサン県レイトカ市及びクラレン市では、アムダマインズの「母子継続ケア強化事業」が、外務省日本NGO連携無償資金協力として今年の3月より行われています。
今回はレイトカ市・クラレン市の医療従事者を対象とした、『母子手帳』の研修と、出産時に行う『新生児蘇生法』の研修を行いました。
ホンジュラスに母子手帳を
ホンジュラスには母子別々のカードが存在しますが、今回事業で導入する、母子の記録と育児情報がひとつになった『母子手帳』について、日本の母子手帳の歴史や意義、具体的な内容についてお伝えしました。参加者からは、「母子手帳は単なる記録ではなく、子どもの人生の歴史の記録だと思うと、とても素敵だ」との声が聞かれました。
またホンジュラス版『母子手帳』の説明については、育児情報の中にある出産時の呼吸法を参加者と一緒に実践したり、参加者間での活発な意見交換を通して理解を深めてもらうことができました。研修後には、「母子手帳は妊産婦・新生児死亡率を下げることに繋がると思う」との嬉しい感想も聞かれました。
私たちの手の中に小さな命がかかっている
普段、出産に携わる機会の多い医療従事者を中心に、『新生児蘇生法』の研修を行いました。講義で基礎的な知識を学び、技術の習得、その後シミュレーションを通した実技研修で、理解を深めていきました。
出生直後に何を確認するのか、いつ人工呼吸(アンビューバッグの使用)を始めるのか、酸素投与のタイミングについてなど、参加者の質問に適宜答えながら、蘇生のポイントや評価項目を明確にしていきました。一人ひとり個別に技術確認をすることで、「初めて人形や器具を触って実践できたのが良かった」「人工呼吸ができたら、ちゃんと肺が膨らむことが分かった」などの感想が聞かれました。
また実技研修では、現場で起こり得るケースを、グループで実践することで、「チーム医療やコミュニケーションの大切さを学べた」「命を守ることに繋がるので、しっかり継続して練習していきたい」などの前向きな声も聞かれました。
今回の『母子手帳』『新生児蘇生法』この二つの研修に共通することは、母子のいのちだけでなく、その後も続く人生を守ることに繋がる内容です。参加してくれた医療従事者の「母子のいのちを、人生を守りたい」という思いは、世界共通であることを今回再確認でき、また心強い仲間が増えたことをとても嬉しく思います。
今後も仲間の活躍を日本から応援しています。
助産師
沖縄県出身、県立中部病院周産期センターに勤務。その後、元JICA海外協力隊の父・姉の背中を追いかけ、2017年助産師隊員として中米ニカラグア・グアテマラへ。現地の伝統的産婆との出会いがきっかけで、沖縄県で出張型の助産院を開業。結婚後に波照間島へ移り、現在は島唯一の助産師として母乳ケア対応や島内に子育て支援センターを立ち上げる。2023年より短期母子保健専門家としてホンジュラスへ。趣味は、シュノーケリング、映画鑑賞。波照間島在住。
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