南部ベティウキ郡における食料安全保障強化活動を振り返って
マダガスカル事務所 アンジェル・ランジアナイヴ

2026/05/20

マダガスカル南部では、気候変動に対する極めて高い脆弱性を背景に、人道危機が深刻化しています。2024年にはエルニーニョ現象によって降雨量が減少し、干ばつのさらなる悪化が農作物に壊滅的な被害を与え、ベティウキ郡における住民の生計を不安定なものにしました。

 

この緊急事態に対応するため、日本政府の支援を受けたWFP(国連世界食糧計画)と協働し、2025年9月から2026年2月にかけて「食料安全保障と気候レジリエンス強化プロジェクト」を実施しました。

  • 照り付ける太陽の下、デモ・ファームに集まって土壌の作り方を学ぶ
  • 種を蒔く農民
主な活動

本プロジェクトでは、持続可能な生産手段の創出に重点を置き、マルアリヴ(Maroarivo)、アンパシンダヴァ(Ampasindava)、アンジャヌマンガツィーカ(Andranomangatsiaka) の3つの村において、主に2つの取り組みを実施しました。

 

1.気候変動に強い野菜栽培
900人の受益者が、改善された灌漑手法や耐性品種の利用など、気候変動に適応した農業技術に関する研修を受けました。また、農業キット一式を配布し、葉物野菜やキュウリ、スイカなどの作物の栽培を促しました。

 

2.養殖
収入源の多様化と栄養改善を目的に、45人を対象に稚魚、初期設備、飼料を提供するとともに、養殖池の建設・管理方法に関する技術研修を実施しました。

 

自分たちで掘った養魚池に稚魚を投入する説明を聞く農民

 

成果と課題

本プロジェクトは、概ね良好な成果を上げることができました。60の住民グループが形成され、地域社会の結束が強化されたほか、アンパシンダヴァ(Ampasindava)村およびアンジャヌマンガツィーカ(Andranomangatsiaka)村では、特に養殖において大きな成功を収めました。

 

一方、実施過程においてはいくつかの大きな課題にも直面しました。

 

まず、行政上のプロセスの遅延により、活動期間が当初の6か月から5か月間へと短縮され、より限られた時間の中で活動を進めなければならなくなりました。また、他のNGOの活動と受益者が重複する可能性のあることが分かり、コミュニティの中で支援を受けていない世帯を慎重に選ぶという必要が生じました。さらに一部の地域では、砂質土壌の影響により、導入した技術が十分に機能しなかったり、稚魚を盗まれるリスクに対応したりしたことが、取り組みをより複雑にしました。野菜栽培では、栽培区画の設定に関する最初の技術指導が不十分な面もありました。

 

期待を胸に、放流した稚魚を眺める農民

 

教訓と今後の展望

今回の経験から、次に挙げる重要な教訓を得ることができました。

 

1. 受益者の重複を避け、支援効果を最大化するためには、パートナー間でのより緊密な情報共有が不可欠であること
2. 農業活動の成功は、受益者への定期的な支援に大きく左右されるため、密接なモニタリング体制の強化が重要であること
3. 活動現場の様々な制約に対応するためには、導入する技術や手法を一律に導入するのではなく、現地の状況に応じて柔軟に調整・適用することが極めて重要であること

 

技術の習得、住民の組織化、生計手段の多様化といった成果は、今後のコミュニティの発展に向けた強固な土台となり、持続可能な食料安全保障の確保に向けた基盤が築かれつつあります。気候ショックの影響が深刻さを増す中で、こうした取り組みは地域社会のレジリエンスと自立性を向上する上で不可欠なものとなっています。

 

マルチングという、わらを使った作業まで終え、笑顔の農民

 

受益者の声

■ マリーさん(4児の母、アンパシンダヴァ村)
「土の準備方法、適切な水やり、暑さに強い種子の選び方を教わりました。以前は親のやり方をそのまま真似するだけでしたが、より理解して取り組めるようになりました。最初の葉が育っていっているのを見た時、希望を取り戻したと感じました」

  • 緑鮮やかな葉をつけて生長するマリーさんの作物
  • 順調に育つスイカ

■ ポールさん(養殖プロジェクト受益者、アンジャヌマンガツィーカ村)
「最初は魚の育て方を全く知りませんでした。でも今では、自分の池で育てた魚を家族みんなで食べられるようになりました。もっと魚が育てば、家族の食料になるだけでなく、販売して収入を得られるかもしれないと期待しています」

 
 

この記事を書いたのは
Angèle RANDRIANAIVO
マダガスカル事務所 プロジェクト・コーディネーター


農村開発分野を中心としたさまざまなプロジェクトに専門家として従事。プロジェクトを、地域住民の生活を持続的に改善するための重要な手段と捉え、自国の発展と人々の幸福に貢献したいという強い思いをもって活動している。ユニセフ・マダガスカルをはじめ、ルワンダ、ベナン、ニジェール、チャド、ブルキナファソ、ブルンジなど、他のアフリカ諸国での豊富な活動経験を有する。2020年からアムダマインズのプロジェクトに参加。首都アンタナナリボ出身。

 
 


 
 

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