思い込みを捨てよ、町へ出よう 海外事業運営本部 白幡利雄
推理小説は、国際協力と似ている-
これは単に私がそう思っているということでしかないのですが、問題の発生→原因の探求→解決、という基本的な構造が同じなだけでなく、その過程で発覚する様々な「誤解」や「思い込み」、「固定観念」、そして、それらを乗り越えて到達する(あるいは訪れる)カタルシスは、まさに推理小説と国際協力に共通する醍醐味なのではないか、と勝手に考えています。まぁ、単に、推理小説につぎ込む時間とお金に対する言い訳です…(笑)
さて、つい最近、「視覚障がい者のための写真教室」なるものを体験する機会がありました。これは、視覚障がい者の山口和彦さんと、写真家の尾﨑大輔さんが10年以上にわたって取り組まれてきたものです。(詳しくお知りになりたい方は、各外部リンクをご覧ください)
今回は、あくまでも体験という趣旨で、目の見える2人でペアを組み、交代でアイマスクを着用し、立場を入れ替えながら小一時間ほど街中を歩き回って写真を撮る、ということに挑戦してみました。
自分がアイマスクをつけ、ガイド役の方の周囲の状況説明を頼りに撮影した写真はこちら。
こういうものが撮りたい、と希望を伝えて歩き始めたはいいものの、「〇〇が見えますよ」といった説明を聞くだけでは、なかなか構図が決まりません。自らの想像力のなさを嘆く間もなく絶えず襲ってくる、歩くこと自体への恐怖心。歩道だと分かってはいても、ビュンビュンと音をたてて通り過ぎていく自転車や人声に、体はすくむ一方。いわゆる「白杖」に似た木の棒をやたらと振り回し、ガイドの肘にしがみつきながら必死に歩いたのですが、これほど怖いとは…。学生時代に部屋の中で似たようなことをしてみた経験はあるものの、街中とはまったく違うということを痛感しました。
お次は、私がガイド役をつとめる番。テーマは「秋」にしたいとのこと。アイマスクを外し、見えるものと、テーマに関係するようなものなどを、できるだけ分かりやすく伝えようと努力しつつ歩くわけですが、これがまた実に難しい。
でも、こうして両方の立場を体験することで、一つ発見がありました。それは、写真を撮るという共通の目的をベースに、ガイドの人とコミュニケーションを深めていくというプロセス自体が、すごく楽しいものなのだということです。正直なところ、視覚障がい者がどうやって写真を楽しむのだろう、という疑問を抱いて企画に参加したのですが、いかに自分が「写真は見るもの」だという固定観念にしばられていたかに気づかされました。
あーあ、国際協力の現場で、これまで長年にわたって「固定観念」を取り払おうと努力してきたのに、まだまだだなぁ。
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