地域一丸となり、他地域を巻き込んだ「メガ医療団」開催 / ホンジュラス事務所 陰山亮子

2016/12/06
コミュニティグループと政府機関担当者らの事前打ち合わせ
コミュニティグループと政府機関担当者および開催校校長の事前打ち合わせ

先日ご紹介した「住みやすいコミュニティ」を目指した活動が、他地域でも開催されました。

「メガ医療団」の企画と政府の戦略が一致
イベントを企画したのは、テグシガルパ市のケネディ地区。市内でも人口が多く、「ケネディ市」と呼んでもおかしくないほどの広さを誇るこの地区。国内の各地域から、首都に仕事を求めて移住してきたケースが多く、「市」並みの大きさになったものの、まだまだ医療サービスを受けることが難しい人々が、大勢住んでいます。 このケネディ地区で、必要と考えられたのが、医者の診察も医薬品も無料で提供される「医療団」の招待です。まだまだ国の保健サービスが国民に行き届かないホンジュラスでは、外国のNGOや政府が企画して、不定期に「医療団」を実施しています。 少し前に、政府がテグシガルパ市内のある地区で、この医療団を計画したものの、地域住民との調整が直接、草の根レベルで実施されていなかったことに端を発し、政府に反感を持つギャング集団から開催の妨げがあり、中止せざるを得ない状況に陥りました。ちょうどその頃、本事業のケネディ地区コミュニティ・グループから医療団開催の話が持ち上がりました。すでにAMDA-MINDSの事業でグループが形成され、コミュニティの現状をよく把握し、地域住民をまとめる力のあるリーダーたちが集まるこの地域であれば準備を円滑に進められるだろうと、政府とコミュニティ双方の考えが一致しました。政府からは視察団が訪れ、大勢の人たちを招待するのに相応しい会場があるかどうか、交通規制が可能な場所であるかなど、コミュニティ・グループのメンバーとともに確認して回り、すべての条件がそろっていることが認められ、この地区での開催が決定されました。

イベント広報
本医療団は2016年の締めくくりとして15,000人の参加を見込んだ大規模なものでした。政府機関は本当にそれだけの人々が集まるであろうか、ということをとても心配しており、地元をよく知るコミュニティ・グループには事前の広報と、当日の来場者の誘導等が任されました。
ケネディ地区を含む25地区を対象として、1週間にわたる広報活動が行われました。リーダーたちは担当を割り振って、朝から晩までポスターを貼り、ビラを配り、広報宣伝カーで喉が枯れるほど、何度も何度も宣伝を行いました。広報を行った他地域の自治会等も、ビラ配り等に協力してくれることとなり、他地域の人々を広く巻き込んで広報活動が行われました。「隣のおじいさんがずっと足が痛そうだから、当日連れて行くわ」「お年寄り移動用のバスは出せないかしら」「もう少しポスターが貼れそうだから、余っていたら回して」と、医療サービスを必要としている人に情報を届けるために、人が集まれば集まるほど、様々な連携が行われました。また一方では、会場となる地域内の学校の壁面塗装が行われることとなり、政府機関からペンキやハケなどの協力を得て、ペンキ塗りの活動も実施されました。
準備や当日だけで、政府関係者や医師などの専門家640人、AMDA-MINDSのコミュニティ・グループや地域ボランティア、ボランティア医師が100人余り、フットサル大会参加者30人余りと、合計800人近くの人々が関わりました。

広報用の横断幕を作成するリーダーたち
広報用の横断幕を作成するリーダーたち

ケネディ地区の入り口に掲示された宣伝横断幕
ケネディ地区の入り口に掲示された宣伝横断幕

ポスターを貼って歩くコミュニティグループメンバー
ポスターを貼って歩くコミュニティグループメンバー

会場となる学校の塗装を手伝う地域の青少年
会場となる学校の塗装を手伝う地域の青少年

大盛況のイベント当日
11月26日朝7:00。あまりの来場者の数に、予定を1時間早めて開場されました。時間をかけて検討した、来場者誘導プランがバッチリ機能し、混乱することなく来場者たちが受診コーナーへと案内されました。子どもたちの遊び場も設置され、政府機関の管弦楽コンサート、女性フットサル大会なども開催され、来場者が楽しむ場も提供されました。公式政府データでは、最終的に9,747人の来場者がありました。記入用紙に記載した人のみの数なので、実際には1.3倍くらい来場したのではないかとのことです。
コミュニティ・グループのメンバーの中には、時間を見て、自らも受診しようと思っていたにもかかわらず、来場者の対応に一生懸命になって、気づいたら受診終了していた、という人もいました。しかしながら、来場者が非常に喜んでくれたので、満足した、と語ってくれました。また、自らが80歳という高齢にもかかわらず、グループのメンバーとして早朝から来場者を誘導し、気を配り続けたおばあさんは、疲れるどころか、「まだまだ頑張れるわ。また次を企画しなくちゃね」と今から意欲満々です。
ケネディ地区は非常に人口が多く、すべての人口を満足させる「住みよいコミュニティ」活動を実施するのは容易なことではありません。グループのメンバーが提案する活動を一つ一つ実施していくことで、より多くの地区住民の参加を得て、一歩一歩よりよい将来へ向かっての活動が続けられることを願います。

診察会場の様子
診察会場の様子

お年寄りの手を引いて会場内を案内するリーダー
お年寄りの手を引いて会場内を案内するリーダー

待合室の様子
待合室の様子

高齢者診療コーナーで治療を受けるおばあさん
高齢者診療コーナーで治療を受けるおばあさん

歯科治療コーナーの様子
歯科治療コーナーの様子

散髪コーナーも設けられた
散髪コーナーも設けられた

子どもたち向けのくす玉わりも開催された
子どもたち向けのくす玉割りも開催された

政府機関(国軍)の演奏隊
政府機関(国軍)の演奏隊