赤ちゃんは元気ですか ~エコー事業の現場から~ ホンジュラス事務所 浦上晶絵
国際ロータリー・グローバル補助金による「エル・パライソ県安全なお産支援事業」の開始から、一年余りが過ぎました。この事業は相模原橋本ロータリークラブ(以下相模原橋本RC)およびダンリロータリークラブ(以下ダンリRC)が提案し、AMDA-MINDSホンジュラスが協力団体として活動しているものです。
相模原橋本RCの皆様には、案件形成時から数え、2年間で8回ホンジュラスを訪問いただきました。現地では、山間地域の妊婦が置かれている生活環境から、妊娠・出産にまつわる医療体制やアクセスの悪さまでを実感され、本事業がそのような状況の改善に大きく貢献していることを確認いただいています。
昨年の今頃はちょうど、母子保健センターの医師・看護師へのエコー検査に関する研修に取り組んでいました。講師は、ダンリRCに所属し、ダンリ病院の産婦人科長でもあるバレラ医師が務めました。エコーの装置に触れるのが初めてという医師・看護師がほとんどでしたが、受講者一人一人への丁寧な指導もあって、今では皆、手慣れた様子でエコー検査を実施しています。
昨年6月に、3つの母子保健センターへエコー装置が配置されて以降、検査を受けた妊婦は延べ1,800人を超えます。そのうち5%程度の妊婦には、子宮や胎盤、胎児に何らかのリスクが発見され、病院への搬送対象となりました。子宮外妊娠、不育症や前置胎盤、羊水過多・過少、逆子や双生児、無脳症・小頭症の胎児もエコー検査で発見されています。怖いのは、妊婦自身に、自覚症状のない場合が多いことです。エコー検査をしていなければ、妊産婦死亡や新生児死亡につながったり、妊産婦が重篤な事態に陥ったりする可能性もありました。しかし、エコー検査の必要性を正しく理解している妊婦は少なく、単に胎児の性別が確認できる装置という考え方が広く定着していました。
山間部の妊婦に、「どうしてエコー検査をするのか」の理由を正しく伝えたくても、母子保健センターの医師や看護師、私たちNGOだけでは、できることにも限界があります。そんな中、妊婦への教育ができる存在として大事な役割を果たしてきたのが、保健ボランティアです。彼らは、村のことなら、各世帯の家の場所から家族構成まで知り尽くしています。保健の知識を備えた保健ボランティアは、妊婦、出産したばかりのお母さん、新生児、5歳未満の子どもをきっちりと把握して、最寄りの山間部の保健所と連携しながら、村の健康を守っています。そんな保健ボランティアの働きかけが、少しずつ妊婦やその家族の意識や行動を変え、彼女たちをエコー検査に向かわせている姿をこの1年でたくさん見てきました。
また、エコー検査をより多くの妊婦に受けてもらおうと、母子保健センターの医師や看護師と一緒に、山間部の保健所へエコー装置を持ち出して、プロモーション活動も行っています。妊婦にエコー検査を身近に感じてもらうことに加え、母子保健センターの医師や看護師に接することによって、出産時の不安を和らげることも目的の1つです。
事業も終盤にさしかかってきましたが、「安全なお産」へ関心を向け、自分と赤ちゃんの健康について理解を深める妊婦が増えていくことを願ってやみません。