ハプニングの連続!?へき地集落での建設作業に密着!
ネパール事務所 小林麻衣子
「ネパール極西部へき地集落における安全な妊娠・出産促進事業」では現在、対象のチュレ地区内でも、もっとも交通アクセスが不便なカイララ集落で保健施設の建設を行っています。
どのくらい不便なのかというと、雨季にあたる6月下旬から9月下旬までは、カイララ集落に通じる唯一の車道(それも山肌を削っただけの未舗装道路)が全く不通となり、最寄りの車止めポイントから5時間歩いてようやくたどり着ける、という程の不便さなのです。
このような場所に暮らす女性たちにとって、妊娠・出産はまさに命がけ。自宅で産気づき、医療機関を訪ねようにも山道を4~5時間、担架で運ばれ、ようやく車に乗ることができても、さらに2時間ほど悪路の揺れに耐えなければならない苦しみ・・・。
私自身の出産経験と照らし合わせてみても、そんな状況は想像することさえできません。チュレ地区で自宅分娩、新生児死亡、妊産婦死亡が多い背景には、このような事情があるのです。
本来なら無事に生まれてくるはずのいのち、無事に迎えられるはずの赤ちゃんを守るべく、私たちはこのカイララ集落に、分娩対応可能な公的保健医療施設の建設を進めています。
しかし、たくさんの資材と人手が必要な建設作業をこの場所で進めるのは、実に大変。施工業者の選定を終え、実際の作業を開始できたのは6月上旬、もう雨季の始まりが目前に迫っていました。車両が入れなくなる雨季の前に、施工に必要となる建設資材を集落まで運び上げなければなりません。斜面にへばりつくように通っている山道を大型ブルドーザーで整備しながら進み、その後を、資材をいっぱいに積んだトラックが続きます。
しかし、運ばれてきたレンガを見たエンジニア(アムダマインズの現地スタッフ)は「こんな質の低いものは発注していない!仕様書通りのものをもう一回運ばせろ!」と怒鳴りました。どんな困難な状況でも、妥協は許しません。
またある時は、砂利が足りなくなるという事態が発生しました。が、すでに雨季の真っただ中。例の山道は土砂崩れで封鎖されてしまっていました。そこで立ち上がったのは、カイララ集落の人たち。
「石ならここにたくさんある、俺たちが砕けばいい話だろ」と、作業に必要な分の砂利を数日間かけて手作業で粉砕し、提供してくれました。
都市部に比べれば人口規模が小さく、へき地に位置するこの集落。しかし、公的保健医療施設が完成すれば、これから毎年100人近い妊婦が、安心して出産できるようになります。皆の願いはただひとつ、どんな場所でもお母さんが安全に妊娠・出産できること。どうか赤ちゃんが家族の笑顔に囲まれて育ちますように。
私たちは、誰ひとり取り残さない活動を、これからも続けていきます。
ネパール事務所 事業統括
外国語の学習が好きで、大学ではヒンディ語を専攻。バックパックを背負って毎年インドを訪れる。大学院を休学して長期滞在したインド・ビハール州の農村で、村の人たちと生活を共にしたことが「地域開発」に興味を持つきっかけに。国際学修士を取得後、青年海外協力隊員としてスリランカで活動。2008年にアムダマインズ入職後は一貫してネパール事業に携わる。最近のストレス発散方法は、学生時代に見たインド映画のダンスシーンを娘と一緒に再現すること。娘のお気に入りは「Mission Kashmir(アルターフ 復讐の名のもとに)」のBumbroダンス。岡山県出身。
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