乳がん・子宮頸がん検診事業が2年目に
ホンジュラス事務所 ダゴベルト・ロペス

2023/12/20

オラ!(スペイン語で「こんにちは」)初めまして。「乳がん・子宮頸がん検診促進による予防啓発事業」のコーディネーターをしている、ダゴベルト・ロペスです。
 

保健ボランティア研修で乳がんについて説明する筆者

 
12月に入り、日本は寒さが増してきたのではないかと思いますが、皆さまお元気にお過ごしでしょうか。キリスト教徒の多いホンジュラスでは、家の庭や玄関にデコレーションが施され、花屋にはポインセチアが並び、クリスマスの雰囲気が漂っています。そんな中、私の担当する事業が2年目を迎えました。
 
1年目は、事業の目的などを関係者に理解してもらうことから始め、診療所の医師・看護師を対象とした検診技術研修を行いました。その後、全4か所の診療所で乳房の超音波(エコー)検査や、酢酸による子宮頸部視診(Visual Inspection with Acetic Acid:VIA)および熱凝固療法(子宮頸がんの前段階の細胞異常に対する治療)を開始した他、地域住民と診療所の架け橋である保健ボランティアの研修や地域啓発活動にも取り組みました。
 
私たちにとって初めてとなるがん領域の事業だったので、資機材調達の手続きに時間を要したり、研修講師探しが難航したりと、数々の困難に戸惑うこともありました。ですが、がん検診サービスを開始できたことに対する診療所スタッフの誇りや、受診できたことに対する地域女性の喜びの声を聞く度に、この事業の意義と仕事に対するやりがいを感じています。そうした現場の声を日本の皆さまにもお届けしたく、ほんの一部にはなりますが、ご紹介します。
 

エル・パライソ診療所の医師、メリッサ・メンドサさん

研修のおかげで、私たちは新しい医療知識とスキルを身につけ、診療所で乳がんのエコー検査や子宮頸がんのVIA、熱凝固療法サービスの提供を開始することができました。
まだVIAについての認知度が低いため、検査を怖がったりナーバスになったりする受診者もいますが、不安を和らげるためにも、VIAがどんな検査で、なぜ必要なのかを、検査前にちゃんと説明するようにしています。
この国の保健医療システムは脆弱で、診療所に必要な人材、資機材、資金が十分にありません。がんだとわかった時には既に手遅れで、治療の施しようもなく亡くなった人をこれまで目にしてきましたが、それは医師である私にとって、とても辛いことでした。この事業は、私たち医療従事者が成長する機会を与えてくれ、がんの早期発見や死亡の削減につながる、大変ありがたく貴重な支援です

熱凝固療法の演習を行うメリッサ医師(中央)

 

子宮頸がん検診VIAと熱凝固療法を受けたマリー・ロペスさん

私はこれまで診療所で何回か細胞診(※)を受けたことがあり、いつも異常はありませんでした。でも下腹部に痛みを感じていて、何が原因なのか、ずっと分からなかったんです。そして今回VIAを受けてみたら、前がん病変が見つかりました。すぐに検査結果が出て、無料で治療もしてもらえたので、とてもホッとしました。今では痛みもなくなり、とても感謝しています。


※ホンジュラスでは、細胞診の感度が低いことや、検査結果が出るまでに数か月かかってしまうことが課題となっています。

自身の体験を語るマリーさん

 

保健ボランティアとして26年間活動するテオドラ・ベラスケスさん


私の親戚は乳がんになり、全摘手術をして乳房を失いました。乳がん検診を受ける機会がなく、わかった時にはかなり進行していて、全摘以外の方法がなかったのです。彼女の地元には乳がん治療に対応している医療機関がないので、その後も、地元を離れて首都テグシガルパ市に住んで治療を受け続けています。金銭的にはもちろん、家族や友人・知人が周りにいない環境下での治療は、精神的にもつらいものです。まだ多くの地元住民は乳がんについての情報や知識を持っておらず、検診の大切さに気づいていません。これからも地域啓発活動を続け、私たち保健ボランティアもがん予防と早期発見に貢献していきたいと思います。
研修で習得したことを乳がん啓発ワークショップで伝えるテオドラさん(左)

 
2年目の事業では、医師・看護師への再研修で知識やスキルのブラッシュアップを図りながら、啓発活動を通じて、検診受診をさらに促していく予定です。また、病院での精密検査の実施や、精密検査受診費の負担軽減を目的とした「住民による支えあい基金」の運用にも取り組んでいきます。
 
私の国、ホンジュラスをご支援いただき、本当にありがとうございます。
これからもどうぞ宜しくお願いいたします。
 
※本事業は、第一三共株式会社(本社:東京都中央区)との連携のもと、実施しています。
 

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この記事を書いたのは
Dagoberto Mejía López
ホンジュラス事務所 事業コーディネーター


医師として、山間部にあるへき地の診療所に勤務していた時、住民と寝食を共にし、病気にも同じようにかかる生活をおくる中で、遠隔地に住む社会的・経済的弱者の公衆衛生の向上に携わりたいという想いを強くする。また、乳がんの発見が遅れた友人が若くして命を落としてしまったことから、がん検診の重要性を痛感。2022年12月より、アムダマインズの乳がん・子宮頸がん検診事業に従事。趣味は、読書、音楽鑑賞、物書き、絵を描くこと。ホンジュラスの首都テグシガルパ市出身。

 

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