うみがめ便り~コーヒーに魅せられた人生、ネパールの丘陵地帯へ(最終章)
なお、本ブログは、アムダマインズ理事長の鈴木が、コーヒーをテーマにこれまでの歩みを振り返りながら、ネパールとの長年にわたる関わりについてつづったものです。
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第一章:コーヒー物語序章
第二章:渋谷・バンコク編
第三章:カンボジア・ニューヨーク編
第四章:グアテマラ編
第五章:ネパール編~駐在時代
第六章:ネパール編~きっかけ
前章にて、カブレ郡におけるコーヒー栽培が軌道に乗り始め、安定した収量が見込めるようになったことから、質の高い生豆が日本に輸出され始めたことを記載させて頂いた。ネパールの農家、特に若い農家にとって、この時期、またこれからの新規参入は決して悪い話ではない、そしてまだ遅くはない。世界の生豆需要は増加傾向にある反面、主要生産国では異常気象や病害などの影響により生産量が減少傾向にある。
ネパール国内においてもコーヒー需要は増加の一途をたどっており、生豆のグレードを問わず、販路を開拓することに大きな支障はない。葉物野菜などと比べ、栽培に関するリスクは高くない。他の果樹栽培との混作や間作も可能で、むしろ苗やチェリーを日差しから守るシェード効果が期待できる。正しく加工され、乾燥した生豆は、生の野菜と異なり一定期間常温の倉庫に保存することが可能である。

過去、内戦や震災、そしてコロナ禍に苦しんだ地域、海抜1,000メートルを優に超える丘陵地に、コーヒー栽培に適した好条件が揃いつつあった。今やらないでいつやるのか。不足するものがあるとすれば、それは苗や肥料を購入するための資金、技術、そして一歩を踏み出す勇気である。
アムダマインズは、M氏を通じてこの機を捉えた。ネパールのゴルカ郡を対象に、コーヒーや野菜の栽培を通じて、主に若手農家を支援するプロジェクト「青年リーダーたちと取り組む『稼ぐための農業』推進プロジェクト」を、新境地を開拓するべく、情熱を注ぎ込み立案し、見事JICAの草の根パートナー事業に採択された。

カブレ郡は2015年の大震災の余震で甚大な被害を受けた地域の一つである。そしてゴルカ郡は本震の被災地であり、家屋の倒壊や地滑り、道路の寸断など、最大規模の被害に見舞われた。そうした地域において若手農家を支援するという目的は、あの時の(第五章で述べた)P氏のそれと根は同じである。P氏は、過疎地であること、厭戦を理由にネパールを離れていく若者に、雇用や収入創出の道を提供したいと考えた。
一方、アムダマインズは内戦後も残る地域社会の課題に加え、震災後、職や新たな機会を求めて故郷を離れていく若年層に収入創出、収入向上の機会を提供したいと考えた。日本でも課題となっているように、若者が地域に残り、付加価値を創造し続ける社会のダイナミズムが地方創生の根幹である。M氏は、アムダマインズの屋根の下、農業振興を通じた社会開発支援という開発戦略を活用し、そのダイナミズムの創出に取り組んだのである。少し語弊はあるかも知れないが、このような真の社会開発に取り組みに挑戦できることが当団体の強みだと考える。
さて、私はここまで、いかにもすべてを観ていたかのように書いてきた。しかし実際は「否」である。コロナ禍の影響もあり、また西アフリカにおける業務の影響もあり、2019年11月を最後に、私はネパールを一度も訪問していなかった。それ故、対象地域であるゴルカ郡のコーヒー生産地を訪問することは最優先と考えていた。そしてついに、2025年5月初旬、日本のゴールデンウィークに、念願だったゴルカ郡を訪問し、いつの日か、「ゴルカ・プライド」の一つとなる可能性を秘めた逸品のコーヒー豆に出会うことができた。
そして今、その豆が織りなす上品な風味を、シエラレオネのオフィスで日々味わえるという、ささやかな、しかしこの上ない幸せに恵まれている。これほど心豊かなひとときが、ほかにあるだろうか。
本ブログで登場したカブレ郡ならびにゴルカ郡産のコーヒーは、KOENBENCH GREENSのサイトで販売されています。ぜひお試しください。
理事長
大学卒業後、民間企業に就職。その後国連ボランティアとしてカンボジアや南アフリカの業務に従事、様々なフィールド経験を通じて国際協力業界へのキャリアチェンジを決意。大学院で国際開発学を学び、ミャンマーにおける人間開発プロジェクトに従事した後、1999年、AMDAグループ入職。ベネズエラ、インドへの緊急救援チームを率いた他、ネパール、アンゴラ、インドネシアなどで様々な事業運営に携わる。2002年、AMDA海外事業本部長就任。2007年、AMDA社会開発機構設立。理事長就任。趣味は旅行、山羊肉料理の堪能。岡山のお気に入りスポットは表町商店街とオランダ通り。神奈川県出身。

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